研究課題/領域番号 |
19K12734
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90030:認知科学関連
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
有光 威志 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (60383840)
|
研究分担者 |
石井 健太郎 専修大学, ネットワーク情報学部, 准教授 (10588742)
開 一夫 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (30323455)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | 認知脳科学 / 近赤外分光法 / 小児科学 / 新生児医学 / 発達 |
研究開始時の研究の概要 |
出生率が増加している早産児は、高次脳機能障害を発症するリスクが高く、小児医療において大きな課題である。早産児が高次脳機能障害を発症する原因として、出生後に早産児が入院する新生児集中治療室では、本来胎児が母胎内で影響を受けるべき正常な親や環境からの作用の欠如が注目されているが、その機序は明らかでない。近年、非侵襲的脳機能測定法である近赤外分光法や視線・吸啜行動などの生体信号を用いた新生児の高次脳機能の研究が可能となってきた。本研究の目的は、NIRSと生体信号などを用いて早産児の高次脳機能障害の発症機序を明らかにし、新たな診断・治療法を確立することである。
|
研究実績の概要 |
今年度は、これまでの研究成果を発展させ、近赤外分光法を用いた新生児の脳機能研究に加えて、新生児集中治療室で用いられる医療機器が早産児の発達に与える影響に関して基礎的検討を行うとともに、家族の関わり合いや社会支援の現状について検討した。新生児の脳機能研究については、これまでに得られたデータの解析を進めた。また、新生児集中治療室で用いられる医療機器として保育器に関する基礎的検討を行った。早産児の低体温は、合併症や死亡のリスクを高め、発達に影響を与える可能性がある。そのため、保育器の保温機能は重要である。本研究では、搬送用保育器の手入れ窓にカバーを装着することの有効性について調べた。その結果、手入れ窓にカバーを装着すると、手入れ窓を閉鎖した時と同等の保温効果があることが示された。この研究結果から、医療機器の改善により早産児の神経学的予後を改善出来る可能性が示された。新生児と家族の関わり合いや社会支援の現状に関する調査については、日本NICU家族会機構(JOIN)に参加している全国17の都道府県の家族会から回答を得た。その結果、「日常生活又は社会生活に支障がある」状態になったことがある家族は半分以上で、こどもが10代になっても同様の状態であったという回答があった。約3割の家族は「日常生活又は社会生活に支障がある」状態に対して、こどもが8歳~10歳の期間に神経発達症などに対して必要な医療費助成が無く、その期間に医療費助成があれば日常生活又は社会生活に役だったと回答された。本調査結果により、適切な医療費助成により家族支援が可能であり、早産児の発達を促すための社会支援には改善の余地がある可能性が示唆された。本研究が発展することで、親と環境が早産児の高次脳機能発達を促す機序を明らかにできる可能性がある。本研究の成果は、新生児の後障害率減少につながる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新生児集中治療室で用いられる医療機器に関する解析が進み論文発表した。また、今年解析を進めた近赤外分光法を用いた新生児の脳機能研究について来年度成果発表予定である。さらに、早産児と親の関わり合いや早産児の成長発達に影響を与える要因に関する調査も進んでいる。研究はおおむね順調に進んでおり、来年度さらに研究を発展させることが出来ると期待される。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は順調に進展しており、現在の研究を継続していくことが成果の発展へと結びつく。今後の研究計画としては、大きく3つの目標がある。1) 2022年度までに得られた早産児の高次脳機能発達を促す環境要因の調査解析を進めて成果発表すること。具体的には、全国の早産児の親を対象に、新生児集中治療室入院中および退院後における親の関わり合いや医療ケアおよび社会支援の現状に関する調査結果を成果発表する。2) 2022年度までにデータが得られた近赤外分光法を用いた新生児の脳反応に関する知見を発展させ、1)で得られた親や環境要因が早産児の脳反応や行動指標とどのような関わり合いがあるか評価し成果発表する。3) 上記から得られた知見をさらに分子・細胞生物学的知見へと発展させるため、in vivoの系での確立と応用を試みる。出生直後の脳組織がヒトの早産児に相当するマウス・ラットを早産児モデルとして、親や環境が早産児の高次脳機能障害に与える影響の機序を探る。
|