研究課題/領域番号 |
19K12739
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90030:認知科学関連
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
松野 響 法政大学, 経済学部, 教授 (90588047)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 比較認知科学 / 身体知覚 / 視点取得 / フサオマキザル / 他者の視点 / 視知覚 / 社会的相互作用 / 比較認知 / 霊長類 |
研究開始時の研究の概要 |
他者の視点から現在の状況がどのように見え、それが自分自身の視点とどのように異なるのかを把握する視覚的な他者視点取得の能力は、協力的、競合的な他者との社会的相互作用の基礎をなす重要な社会認知機能の一つである。本研究では、そのような視覚的視点取得の能力を支える3つの過程、すなわち、他者と他者の志向する対象を統合的に知覚認識する過程、他者身体の視点に自らの視点を重ねてその知覚範囲を把握する過程、他者身体の空間位置からどのような知覚表象が生じうるかを推測する過程、に焦点を当てて、ヒト以外の霊長類による他者身体の視知覚特性を検討することで、社会的認知機能の進化的基盤を問う。
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研究実績の概要 |
本研究計画は、ヒト以外の霊長類を対象として視点取得を支える身体知覚特性の比較研究を実験心理学的な手法を用いておこない、社会的認知の基礎となる身体的な他者認識の進化的な普遍性と種独自性を明らかにすることを目的としている。本年度までにおこなったヒトとフサオマキザルの比較実験から、フサオマキザルもヒト同様に、他者身体が社会的な相互作用をおこなう空間配置(対面)で呈示された場合には、そうでない背面の配置の場合と比べて視覚弁別が容易であること、他者身体と物体との空間関係の知覚についてはヒトとは異なり、フサオマキザルの視覚弁別成績が他者身体の向きによって左右されないことが明らかとなった。本年度は、ヒトの視点取得研究で用いられているものと類似の課題を用いた実験を実施し、他者身体が物体に働きかける情景の視覚弁別学習が、観察視点を変えた際にも般化するか否かを検討した。フサオマキザルの弁別成績は視点の変化によって低下し、観察視点が変わると同一の他者行為を識別することが困難となることが明らかとなった。これらの結果は、ヒトとヒト以外の霊長類の他者身体の知覚について共通点と相違の両方があることを示している。対面する他者身体の知覚において示されたヒトとフサオマキザルの類似は、フサオマキザルの視知覚システムにヒトのそれと同様の社会的な空間配置に対する感受性があり、複数の他者身体が統合的に知覚されていることを示唆している。一方、フサオマキザルが観察視点によらない他者の行為の視点非依存の表象を欠いていることを示す結果は、他の認知能力に比べても他種との差異が顕著であると言われるヒトの洗練された社会的認知能力が、他種と比べてより柔軟な他者の知覚表象に根差していることを示唆している。
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