研究課題/領域番号 |
19K12779
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90110:生体医工学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
川浦 稚代 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 講師 (60324422)
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研究分担者 |
藤井 啓輔 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 講師 (40469937)
今井 國治 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 教授 (20335053)
池田 充 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 教授 (50184437)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 放射線防護 / 医療被ばく / 小児心臓CT / ファントム / 画質評価 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、近年のCT装置の技術進歩に伴い、その検査件数が急増したことで被ばくリスクの増加が懸念されている小児の心臓CT検査において、独自に開発した小児用心臓動態ファントムと小児用臓器線量計測システム、ならびに、微弱光測定システムを利用した線量分布計測システムを用いて、小児心臓CT検査時の画質と線量の関係解明を試みる。また、造影剤の物理特性が被ばく線量と画質に及ぼす影響を調査し、得られた成果を総合的に評価することで、小児心臓CT検査の最適化について検討を行う。
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研究実績の概要 |
2023年度は、現在、最も時間分解能が高い2管球CT装置の画質と線量の関係を調べた。2管球CT装置では、小児撮影において、通常、高ピッチヘリカルスキャン(ヘリカル)か、コンベンショナルスキャン(コンベ)のどちらかが選択されるが、高心拍小児においては、どちらの撮影モードがより適切であるかは不明である。ヘリカルモードは1心拍撮影が可能だが、各スライスで収集心位相が異なるので、高心拍では画質低下が問題となる。一方、コンベモードは、2~3心拍撮影のためヘリカルモードよりも被ばくが増加するが、各スライスでの収集心位相は統一されており、ヘリカルアーチファクトを伴わないため、ヘリカルモードよりも画質が良くなる傾向にある。そこで我々は、本研究で開発した小児型心臓動態ファントムを用いて、収縮期(40%心位相)における冠動脈の描出能(CNR)とモーションアーチファクトに着目し、両撮影モードの画質を比較した。結果、CNRはいずれの心拍数においてもほぼ同程度であった。次に、今回新たに考案したモーションアーチファクト評価指標を用いて、両撮影モードのアーチファクトを比較した結果、コンベモードに比べヘリカルモードの方がモーションアーチファクは小さいことが分かった。ただし、3D画像の比較では、ヘリカルモードで、140~160bpmの高心拍において、心室周囲のヘリカルアーチファクトが目立った。また、コンベモードでは、120~140bpmまでは見られなかった階段状アーチファクトが、160bpmでは見られることが分かった。実効線量の比較では、両撮影モードともに、心拍数に依存せずほぼ同程度であることが分かった。よって、2管球CT装置では、冠動脈の観察にはヘリカルモードの使用が推奨されるが、心室の観察では、ヘリカルアーチファクトによる画質低下が問題となることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2023年度は協力病院における新型コロナウイルスの感染拡大防止対策のための入構制限が緩和されつつあったことから、ある程度、臨床での研究頻度が改善された。データ収集や解析が進むにつれ、現在まで使用していた心臓動態ファントムでは、臨床に即した検討を行うには、さらに構造的な改良が必要であることが分かった。当初、最新のアーチファクト低減アルゴリズムでファントム画像を認識させるためには、心臓モデルの周囲に水が必要であることがわかり、円筒状の水槽中央に心臓モデルを配置したファントム構造を採用していたが、スキャン範囲内に肺構造(空気を含む)が存在しないため、人体とファントムとのX線の吸収特性が異なり、ファントムを撮影した際の照射線量が、実際の臨床条件よりも高めに設定されるという欠点があることが分かった。本研究の目的は、実際の臨床条件に即した撮影条件で小児心臓CTA検査の最適化を目指すことであるため、可能な限り人体の構造を正確に模擬する必要があった。そこで、昨年は設計段階で終わっていた肺モデルを安価な材料で作製できるよう設計しなおし、アクリル製のドーナッツ状の円柱容器を肺モデルとして作製し、心臓動態ファントムに新たに導入した。結果、ファントム撮影時の実効線量は臨床条件に近い値を示すようになった。現在、この改良したファントムを用いて、昨年度までに収集したデータを順次収集しなおし、データの解析および再現性の検証を行っている。ここまでの過程に長い時間を要したが、実験が制限されていた期間が長かったため、ファントムの耐久性の検証や、少ないデータから多方面での問題点の洗い出しを行うことが難しく、研究の要となるファントムの構造決定に予想外の時間を要した。現在は、順調に臨床でのデータ収集が可能となっているため、2024年度には、研究開始当初に計画していた研究項目を可能な限り検討したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、高心拍小児に対する心臓CT検査の最適化を検討するために、得られたCT画像の画質を冠動脈や心室のコントラスト分解能やモーションアーチファクトを指標に定量的に評価し、既存のあるいは新たに考案した画質改善法の効果を調査している。モーションアーチファクトの評価では、ローレンツ解析とジニ係数を用いた鮮鋭度評価法と粒子形状指標であるCircularityとRoundnessを組み合わせた形状評価法を考案した。しかし、通常臨床では、CT画像を人間の目で見て病変部や正常解剖を確認する必要があるため、我々が提案した物理評価指標による客観的評価結果が、視覚による主観的評価結果と一致するかどうかは不明である。そこで2024年度は、本研究で考案した2種類の物理評価指標による画質評価結果と視覚評価との関係を明らかにする。視覚評価に関しては、名古屋大学の生命倫理委員会の承認を得る。一方、本研究では現在までに、時間分解能が高い2管球CT装置やモーションアーチファクト低減アルゴリズムを搭載したCT装置での高心拍小児における検査の最適化を検討してきたが、近年、超高精細データでの画像収集法とAI技術に基づいた超解像画像再構成技術を組み合わせた、被ばく低減と高精細化の両立が可能なCT装置が登場している。そこで今年度は、高心拍小児における高精細CTの有用性を調査する予定である。心拍数を変化させ、高精細CTにより撮影したファントム画像のコントラスト分解能、画像ノイズ、および鮮鋭度を評価することで画質を総合的に評価し、被ばく線量との関係を明らかにする。解析結果を基に、現在臨床で使用されているCT装置の特性に応じた高心拍小児の最適な撮影条件を提案する。
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