研究課題/領域番号 |
19K12923
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
嘉目 道人 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (10761215)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2021年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2019年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 超越論的語用論 / 討議倫理学 / 言語行為論 / フィクション / ヘイトスピーチ / 遂行的矛盾 / 虚構的言説 / フェイク / 現代アート |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、20世紀ドイツのコミュニケーション論を主導した哲学者の一人、カール‐オットー・アーペルの討議理論を再検討するものである。 アーペルの理論には、コミュニケーションの中でも特に討議を重視する半面、虚構的な言説を軽視する傾向があった。しかし、現代社会では「フェイク」も含めた広義の虚構的言説の影響力は増す一方であるように思われる。 そこで本研究は、哲学だけでなく美学および文学理論の動向にも目を配り、アーペルの討議理論の修正・拡張を通じて、芸術と社会の関係を問い直すことを目指す。 3年間の研究期間のうち、特に初年度は美学・文芸学の動向の把握に努め、残りの2年間で考察を深め、その成果を発表する。
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研究成果の概要 |
本研究は、カール‐オットー・アーペルの討議理論を再検討するものである。アーペルの討議理論は論証的討議を重視する半面、虚構的(フィクション的)言説を等閑視する傾向があった。本研究では、アーペルの討議理論に対して、虚構的言説を中心とするより広範な言説を捉えうるような拡張を試みた。具体的には、アーペルの討議理論が前提としている言語行為論に着目し、発語媒介効果の観点から虚構的な言説の倫理的責任を問うことの妥当性を論じるとともに、ハーバーマスのコミュニケーション的行為の理論と接続することを試みた。その上で、ヘイトスピーチに代表される差別的言説を、ある意味で虚構的なものとして扱う可能性を示した。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
差別的言説は、その真理性が争点化されるべき言説であることを装うが、実際には真理性は問題ではなく、その発話を通してもたらされる効果に眼目がある。この点で、差別的言説は虚構的言説つまりフィクションと比較可能な言説であると言える。本研究は、差別的言説の持つこのような特性を明確化した。これにより、フィクションについての既存の研究成果を差別的言説の批判的研究に応用する可能性が拓かれたと言える。同時に、われわれが日常的に行っている討議の場において、差別的言説はいかなる仕方で退けられなければならないか、ということも明らかになった。
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