研究課題/領域番号 |
19K12937
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 福島大学 (2021-2023) 早稲田大学 (2019-2020) |
研究代表者 |
岸見 太一 福島大学, 行政政策学類, 准教授 (40779055)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 一時的外国人労働者 / 技能実習 / 人の移動の政治理論 / 認識的不正義 / 関係的平等 / 潜在バイアス / 移民政策 / 非正規滞在 / 入管収容 / 非正規滞在者 / 強制送還 / 移民の倫理学 / 外国人の一時受け入れ政策 / 政治理論 |
研究開始時の研究の概要 |
日本政府は現在、特定技能の導入など外国人の一時的受け入れ政策を推進している。本研究の目的は移民の倫理学の観点から、一時的受け入れ政策と非正規滞在者の強制送還政策が、いかなる規範的制約に服すべきであり、これらの政策に関してどのような施策が許容/制限されるかを、特に日本に焦点をあてて考察することである。先行研究においては、構造的不正義を看過している、一時的受け入れ政策と強制送還政策とを別々に考察している点で限界がある。本研究はこの限界を、各人の国籍・ジェンダー・人種などに起因する社会的位置の違いに注意を払い、外国人の一時受け入れ政策と強制送還政策の運用上の一体性を考慮することで、克服する。
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研究実績の概要 |
本研究の課題は、外国人の一時的受け入れ政策と非正規滞在者の強制送還政策という一体的に運用される二つの政策は、(i.)いかなる規範的制約に服するべきな のだろうか、(ii.)その規範的制約のもとでは、どのような施策が許容され、どのような施策が制限されるのだろうか、(iii.)特に日本においては、どのような 施策が許容されどのような施策が制限されるのだろうか、という三つの問いの探求である。 第4年目である2023年度では、(i.)と(ii.)に関して、非正規滞在に関して、入管の許可なく暮らすことはそもそも悪いのかという問いを考察した。この論点は J・カレンズの国境開放論にかかわるが現実の国家でなされる入管法の執行のされ方については論じられていない。本研究は、刑事政策学および行政法の知見も ふまえ、制裁としての入管収容は廃止されるべきことと、許可なく暮らす人びとを「不法」と名指すべきではないと考えられる論拠を考察した。 (iii.)に関しては、技能実習生の妊娠に焦点をあて研究した。技能実習で来日した女性が妊娠により悲劇的な事態に直面することは少なくない。2020年11月に熊 本の技能実習生女性が自宅で双子の赤ちゃんを死産し自宅の棚に安置したことが死体遺棄罪に問われた事件が広く報道されたことは記憶に新しい。日本の法令を 念頭に置いた場合には、男女雇用機会均等法では妊娠・出産等を理由とした不利益取扱いは禁止されているため、彼女が妊娠を隠さねばならなかった理由は理解 することは難しい。この問題を理解するためは、法令だけからは捉えることができない構造的不正義に着目する必要がある。そのため、I・ヤングが1990年まで に発表した身体と無意識のバイアスについての論考、とアメリカの入国管理政策に関する2020年のA・リード=サンドバルの論考に着目しつつ背景にある構造的 不正義を明らかにする研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本科研の成果を集大成した論考の執筆作業が遅れている。その要因は、身体論、認識的不正議論、構造的不正議論についての理論研究レビューの遅れにある。2023年度の研究では、分析フェミニズムにおける構造論および身体論についての議論を中心に検討した。特に、構造および身体に関わる先行研究から、人の移動の政治理論における方法論の検討を行った。途中経過は、「オンライン政治理論研究会」にて「日常世界から考えることはなぜ重要か:フェミニズム哲学の事例分析から学ぶ 」として報告した。また、稲葉奈々子氏と高谷幸氏との共著『入管を問う』の合評会においても評者から方法論について有益なコメントを得ることができた。以上の成果もふまえながら、執筆作業を完了させたい。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は集大成となる論考の集大成となる論考の完成させる。特に、2023年度までの成果をもとに、人の移動の政治理論において身体および構造に焦点をあてる意義をまとめ、方法論として体系化することで、これまでの成果に対して一貫した展望を与えたい。
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