研究課題/領域番号 |
19K12939
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 長崎大学 (2023) 創価大学 (2021-2022) 千葉大学 (2019-2020) |
研究代表者 |
久保田 さゆり 長崎大学, 教育学部, 助教 (60835891)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 動物倫理 / 共感 / ウェルフェア / 動物の道徳的地位 / ペット / 動物の福利 / 動物関連法 / 関係性 / ペット動物 / 畜産動物 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の核心をなす問いは、「ペット」と呼ばれる動物の存在にたいする「共感」的関係と「共感」的理解は、動物倫理において特別な位置づけをもちうるか、というものである。 人間は、犬や猫など、長い年月をかけて家畜化されてきた動物との間に、特別な関係を築いている。そうした関係は、動物倫理の議論において、偏愛として否定的に扱われることもある。だが、その関係は、対象への共感的理解に基づいたもので、人間も含めた倫理の基礎となる要素を特徴的に含んでいることも確かである。本研究では「ペットにたいする共感」を動物にたいする倫理的配慮の範型として位置づけ、共感の拡張による動物倫理の可能性を検討する。
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研究実績の概要 |
本研究は、ペット動物にたいする「共感」が、動物倫理において特別な位置づけをもつかを解明し、ペット動物という身近な動物にたいする共感を範型とすることで、さまざまな状況にある動物をめぐる実践的指針を導くような動物倫理の枠組みを基礎づけることが可能であるか検討するものである。そのための課題として、(1)共感に注目する動物倫理の先行研究を整理し、論点と課題を明らかにすること、(2)対象との関係に応じて、倫理的配慮のあり方に違いを設ける「関係主義」的な動物倫理の議論と、共感概念との関係を検討すること、(3)共感的動物倫理が、家畜化された動物以外の動物にも適用可能であるかを検討し、動物倫理の枠組みとしての妥当性を検証すること、という3つの課題を設定している。 最終年度である本年度は、(3)広範的関係から「共感」による動物倫理の妥当性を検討することに主に取り組んだ。とくに、M. Sloteの議論やニーズ概念に訴える議論を展開するS.C.Miller(2012)を参照しながら、身近な存在へのケアと遠く離れた存在へのケアの間の均衡のあり方を考察することで、家畜化された動物以外の存在にたいする共感の可能性を検討した。また、昨年度から継続して取り組んできた、共感の拡張を妨げる要因の検討を進め、論文「動物をめぐるウェルフェア論の問題と福利概念の役割」の一部として公表した。 本研究では「共感」の役割の検討を主題としながら、動物倫理の議論が実際に社会的に受けいれられていくために必要なアプローチの検討を行ってきた。その成果は複数の論文にまとめており、今後も継続的に共感概念に注目していく意義を明確化した。
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