研究課題/領域番号 |
19K12942
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 東京都立大学 (2020-2022) 名古屋外国語大学 (2019) |
研究代表者 |
佐藤 亮司 東京都立大学, 大学教育センター, 准教授 (90815466)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 自由エネルギー原理 / 予測誤差最小化 / 知覚 / 高次認知 / 予測誤差最小化理論 / 認知 / 思考 / 知覚の哲学 / 心の哲学 / 認知哲学 / 知覚と高次認知 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、心に関する最新の科学的な理論である予測誤差最小化理論を踏まえ 、哲学的文献および認知科学における様々な理論的実験的成果を利用して、知覚と信念のような高次の認知の本性を明らかにするとともに、それを基に知覚の認識論的役割について再考する。また本研究では同時に、知覚と認知の関係に関わる現代社会の重要課題についても予測誤差最小化理論の観点から解明を試みる。これらの重要課題には、いわゆるフェイクニュースや陰謀論など、病的とは言えないが様々な偏った思考様式が含まれる。これらに関する心理学的な成果をより大きな理論的な枠組みおよび哲学的理論と結びつける。
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研究実績の概要 |
本研究課題『予測誤差最小化理論における知 覚と認知の関係の探求』においては、思考のような高次の認知機能を同理論の観点から理解することが鍵となる。というのも、知覚についてはこの理論の観点から既に多くの理論的実験的研究がなされているが、高次の認知機能についてはまだ研究の端緒についたばかりだからである。この理論を支持する研究者の間では 知覚は「自由エネルギーの最小化」の観点から理解されてきたが、近年では、計画や意思決定のような未来志向の認知的な働きは「期待」自由エネルギーの最小化の観点から研究が進められている。概念的な思考は必ずしも計画や意思決定のみに用いられるわけではないが、人間の計画、意思決定において概念的な思考が重要な役割を占めていることは明らかであるため、その観点から思考も理解できるのではないかという展望を持ち研究を進めてきた。現段階では「予期自由エネルギー」の最小化の遂行に必要なメカニズムと、これまでの概念的な思考研究の整理がまとまったため、学会発表や論文の投稿の準備を進めている。そのほかに、前年度から行われていた、陰謀論とその広まりについての研究については、雑誌論文として投稿されていたが、改訂の上、再投稿中である。同論文では、人が陰謀論を抱き、それが放棄されなくなるメカニズムについて、思考だけでなく感情や社会的な状況の観点まで取り入れた包括的な視点から理解し、またそれに基づいて陰謀論を抱く人の合理性について評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、三つのサブプロジェクトに分かれている。 サブプロジェクト1. 予測誤差最小化理論において哲学的な意味での「知覚」や「思考」 がどのように位置付けられるかという問題である。「あそこの床で犬が 寝ている」という概念的思考と「あそこの床で犬が寝ている」という知覚は素朴にはカテゴリーの異なるもののように思われる。これらのカテゴリーについて、予測誤差最小化理論のもたらす含意を探求する。サブプロジェクト2. はサブプロジェクト1.の成果に基づいて、知覚の認識論的役割の再評価が行われる。サブプロジェクト3.は前述の陰謀論のような、認知と知覚の相互作用が関わる現代社会において重要性を増している問題に予測誤差最小化理論を適用する。現状としては、サブプロジェクト3が先行したため、サブプロジェクト1, サブプロジェクト2は本年度成果を取りまとめることとなる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、本科研費の最終年となる。サブプロジェクト1とサブプロジェクト2をさらに推進し、学会発表、論文投稿、書籍出版等で研究成果を発信していく。
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