研究課題/領域番号 |
19K12944
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 (2021-2023) 大阪経済大学 (2019-2020) |
研究代表者 |
杉本 俊介 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 准教授 (80755819)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 徳 / 徳倫理学 / 懐徳堂 / 中井竹山 / 中井履軒 / 経営理念 / テキストマイニング / 日本企業 / 組織の徳 / 不祥事 / スワントン / 信頼性 / 倫理学 / ビジネス倫理 / 企業不祥事 / 組織 |
研究開始時の研究の概要 |
ビジネス倫理の諸問題に対して「徳」と呼ばれる個人の性格特性に基づいた徳倫理学的アプローチを採る研究が登場している。功利主義や義務論など従来の倫理学理論では取りこぼされてしまいがちな経営者や従業員個人の動機や感情をすくい取れる点に注目が集まっている。しかし近年では、会計不正や検査不正など組織構造や企業文化に起因する企業不祥事が目立ってきている。この種の不祥事に対して、個人の性格特性に注目した従来の徳倫理学的アプローチをそのまま適用することは困難である。 そこで本研究は、個人でなく企業組織の性格特性として徳を捉え直し、企業不祥事に関する組織的徳に基づいた評価枠組みの提案を目指す。
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研究実績の概要 |
今年度は日本における徳倫理学の可能性を追求した。前年度に査読誌に掲載した「経営理念に表れる日本企業の徳 --- テキストマイニングを用いて ---」では、西洋の研究ばかり参照してきた徳倫理学の先行研究は、日本や東洋に固有の徳を見過ごしてきた可能性はないだろうか、と問い、その可能性を追求した。そして、日本固有の徳の可能性として、徳川時代の「徳の意味を深く心に省みること(懐徳)」を目指す大阪商人の学校「懐徳堂」に言及した。今年度は実際に、懐徳堂儒学から現代の徳倫理学研究に対して新たな知見を提示しようと試みた。すでに中国の儒学を現代の徳倫理学と比較する試みは数多くなされている。しかし、日本の儒学との比較はなされていない。そこで、懐徳堂儒学、特に中井竹山・中井履軒の思想と比較した。その結果、中井竹山が注目する「利」は、西洋哲学の中には見られない徳目であることを発見した。一般に儒学において「利」は悪徳に数えられてきた。江戸時代の町人文化という共同体に見出される徳目として注目されてよいかもしれない。また中井履軒の「孝」それ自体は、孝弟として儒学の徳目であるが、履軒の「孝」の動機主義的性格はそれ自体独自のものかもしれないことを示した。さらに中井履軒のような徳の外在主義的理解は現代の徳倫理学に見直しを迫るだろうと論じた。以上の成果は、「日本における徳の諸相──国文学と倫理学の対話を通じて」というワークショップをオーガナイズして、「懐徳堂から学ぶ日本の徳倫理学」として発表し、国文学者や倫理学者と意見交換した。
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