研究課題/領域番号 |
19K12976
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01050:美学および芸術論関連
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研究機関 | 明治大学 (2021-2023) 早稲田大学 (2020) 北海道大学 (2019) |
研究代表者 |
伊藤 愉 明治大学, 文学部, 専任講師 (00816556)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | ロシア演劇 / セルゲイ・トレチヤコフ / 検閲 / ロシア・アヴァンギャルド / ドキュメンタリー演劇 / ファクトの文学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、1920年代後半のロシア演劇におけるテキストによる同時代表象(戯曲)とそれに伴う実践(上演)を、「ファクト」の概念を軸に分析するものである。より具体的には、1917年の社会主義革命からおよそ10年を経て登場した「ソ連の日常」を描く新しい戯曲に対して、革命期に生まれた前衛的な演出手法の関わりとその展開を作家セルゲイ・トレチヤコフの活動を中心に考察する。戯曲と上演演出の関係、また上演計画と検閲の関係を考察・分析し、1920年代後半のロシア演劇における方法論的挫折と展開の可能性を明らかにすることを目指す。
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研究実績の概要 |
2023年度も、ウクライナ情勢の影響により、集中的に滞在し調査することが困難であったが、8月から9月にかけてモスクワに滞在した。 ここまでは、セルゲイ・トレチヤコフの『子どもが欲しい』を「ドキュメンタリー演劇」という観点から考察するため、現在の「ドキュメンタリー演劇」の動向を扱う資料を渉猟し、読解を進めてきた。また2024年3月後半から長期のモスクワ滞在を開始し、アーカイヴを中心とした同時代の資料を収集している。その過程で、1960年代に「ファクトの文学」をめぐる議論が再興し、演劇雑誌でも演劇における「ファクト」概念の取り扱いが論じられていることを確認した。社会主義リアリズムを前提とした議論であるものの、1920年代の「ファクト」を対象化させうる文脈として、本研究でも参照していくことを検討している。 また、2023年7月に、1920年代のドキュメンタリー的作品の一例として、1927年にメイエルホリド劇場から日本演劇の調査のため派遣されたグリゴーリー・ガウズネルによる日本旅行記『見知らぬ日本』を翻訳出版した。なお翻訳には、同時代の演劇を中心とした文化状況からガウズネルの活動を考察し、その意義を示す解説を著した。その後、2023年12月に同書の内容に基づいた報告を北海道スラブ研究会で行なった。 そのほか、2023年8月には、社会主義リアリズムと演出家土方与志の関わりを、同時の回想録やロシア語の同時代資料から分析し、17th EAJS International ConferenceでExploring the possibility of understanding Socialist realism in postwar Shingeki from the aspect of Yoshi Hijikata's experiences.と題した報告を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ウクライナ情勢が収束の気配を見せないことから、長期滞在による研究開始が遅れたため。
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今後の研究の推進方策 |
2024年3月後半から長期のモスクワ滞在を開始し、アーカイヴを中心とした同時代の資料を収集している。セルゲイ・トレチヤコフ、メイエルホリド劇場のアーカカイヴを中心に、ソ連時代の定期刊行物などにも目を通している。 2024年度、長期滞在を予定しているため、現地の研究者と議論を重ね、資料の分析および重要資料への注釈作業を中心として、1920年代のファクトの概念を詳らかにしていくことを目指す。
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