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近代ドイツ美学と占術の交叉に関する思想史的研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K12983
研究種目

若手研究

配分区分基金
審査区分 小区分01050:美学および芸術論関連
研究機関東京藝術大学

研究代表者

井奥 陽子  東京藝術大学, 美術学部, 研究員 (60836279)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
キーワード初期近代 / 啓蒙主義 / ヴォルフ学派 / バウムガルテン / カント / poeta vates / 予言 / 迷信 / 近代 / 啓蒙 / 美学 / 占術 / 記号 / 認識 / 予見 / アルス / 天文学
研究開始時の研究の概要

本研究は、近代ドイツにおいて「美学」が哲学の一分野として誕生する際に、実は占術がその主要な部門を担うべく構想されていた、という従来看過されてきた近代ドイツ美学と占術の交叉に注目する。そして一方では近代において占星術が学問から脱落していく過程と、他方では予見能力が認識論のなかで独立して扱われるようになる過程を辿りつつ、初期近代の哲学者・美学者における占術の扱いを考察することによって、占術という新たな側面から、学科としての美学誕生の歴史を炙り出すことを試みる。

研究実績の概要

2022年度は哲学・神学・科学史における占術の歴史について考察し、占星術を代表とする占術が近代に学術の外へ追いやられていった道筋を辿りつつ、本研究が対象とするヴォルフ学派の位置付けについて見通しを示した。2023年度はさらに、美学史の観点から検討を加えた。具体的には、占術と芸術の接点として注目すべきpoeta vates(予言者としての詩人)という思想について、古代~近代までの系譜を辿った。この思想はロマン主義でおおいに復興・流行するが、他方で18世紀半ばのバウムガルテンのテクストには、この伝統に対して否定的な記述が見出される。これをたんにロマン主義がその反動となるような近代合理主義として片付けるのではなく、占いを脱神秘化することで学問へ取り込もうとする積極的な企てとみなすべきであろう、という見解を示した。以上の成果は3月に研究会で発表した。
また、バウムガルテンの美学は一般にカントによる批判を通して理解されていることから、カントによるバウムガルテン批判を改めて検討した。具体的には、完全性と合目的性およびそれらについての「形式」の概念を中心に、両者の根本的な立場の違いに由来する相違点を整理したうえで、それにもかかわらずカントはヴォルフ学派を受け継いで概念を形成したことを指摘した。以上の成果は10月に学会シンポジウムで発表した。
さらにタロットの歴史について二次文献を整理するなかで、たんなる遊戯カードであったタロットが神秘的な占いに変貌する時期がちょうど本研究の対象とする18世紀後半であることに注目した。そこから、タロットが神秘化された契機としてアレゴリーという芸術表現の形式があるのではないかと考え、美学史ではちょうどアレゴリー批判が生じた時代であるということも勘案しつつ、この表現形式について考察を加えた。この見解は書籍へのコラムの寄稿というかたちで公表した(2024年刊行予定)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2023年度も新型コロナウイルス感染症の影響が残存し、また国際情勢の緊張などから、国内外での研究活動の停滞が余儀なくされた。研究内容としては、カントとバウムガルテンの比較研究について、本研究にとって重要な予見能力論にまで踏み込むことができず、この点に課題が残った。

今後の研究の推進方策

本研究課題の2つめの柱である、予見能力論の考察に注力する。ヴォルフ、ビルフィンガー、バウムガルテン、マイアー、カントを中心に調査し、適宜その他の周辺の思想家にも目を配る。

報告書

(5件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 2020 実施状況報告書
  • 2019 実施状況報告書
  • 研究成果

    (16件)

すべて 2023 2022 2021 2020 2019 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 2件) 図書 (3件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] 〈占いの哲学〉に向けて:古代〜啓蒙時代のヨーロッパ・キリスト教世界における占いと魔術の位置付け2023

    • 著者名/発表者名
      井奥陽子
    • 雑誌名

      多様体

      巻: 5 ページ: 5-24

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] A. G. Baumgarten and G. F. Meier on Proper Names and their Poetic Effect2021

    • 著者名/発表者名
      IOKU Yoko
    • 雑誌名

      Aesthetics

      巻: 25 ページ: 24-36

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] A・G・バウムガルテンとG・F・マイアーにおける固有名とその詩的効果2019

    • 著者名/発表者名
      井奥陽子
    • 雑誌名

      美学

      巻: 70(1) ページ: 1-12

    • NAID

      130008036151

    • 関連する報告書
      2019 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] バウムガルテン『形而上学』(第四版)「経験的心理学」訳注:その62019

    • 著者名/発表者名
      樋笠勝士、井奥陽子、津田栞里
    • 雑誌名

      成城文藝

      巻: 247 ページ: 93-107

    • NAID

      120006764325

    • 関連する報告書
      2019 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] カントによるバウムガルテン美学批判の再検討2023

    • 著者名/発表者名
      井奥陽子
    • 学会等名
      日本カント協会第48大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] poeta vatesの系譜とバウムガルテンによるその否定2023

    • 著者名/発表者名
      井奥陽子
    • 学会等名
      科学研究費補助金基盤研究(C)「近代美学と古典弁論術:弁論術の崩壊と再構築」23年度第2回研究会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] バウムガルテンによる諸学の基礎づけ:形而上学から美学へ2021

    • 著者名/発表者名
      増山浩人、桑原俊介、井奥陽子、津田栞里
    • 学会等名
      日本哲学会第80回大会公募ワークショップ
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] 占術と/の美学:A. G. バウムガルテンにおける〈予兆の記号術〉とその帰趨2020

    • 著者名/発表者名
      井奥陽子
    • 学会等名
      第71回美学会全国大会
    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
  • [学会発表] 神と詩人の世界創造:J. P. ウーツの教訓詩「弁神論」における神学的可能世界論と天文学的複数世界論の交錯2020

    • 著者名/発表者名
      井奥陽子
    • 学会等名
      JSPS科研費JP19H01209「詩学的虚構論と複数世界論の交叉の系譜的研究」第5回研究報告会
    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
  • [学会発表] 近代ドイツにおける美学の誕生と古代レトリックの利用2020

    • 著者名/発表者名
      井奥陽子
    • 学会等名
      JSPS科研費JP19H01247「近代国家の文化的アイデンティティ形成における古代表象の諸相」研究会
    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] ヴォルフ学派における天体の表象2019

    • 著者名/発表者名
      井奥陽子
    • 学会等名
      科学研究費補助金(基盤研究B)「詩学的虚構論と複数世界論の交叉の系譜的研究」(JP19H01209)第1回研究報告
    • 関連する報告書
      2019 実施状況報告書
  • [図書] 近代美学入門2023

    • 著者名/発表者名
      井奥陽子
    • 総ページ数
      320
    • 出版者
      筑摩書房
    • ISBN
      9784480075840
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [図書] フィクションの哲学:詩学的虚構論と複数世界論のキアスム2022

    • 著者名/発表者名
      樋笠勝士(編)、井奥陽子他
    • 総ページ数
      344
    • 出版者
      月曜社
    • ISBN
      4865031316
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [図書] バウムガルテンの美学:図像と認識の修辞学2020

    • 著者名/発表者名
      井奥陽子
    • 総ページ数
      344
    • 出版者
      慶應義塾大学出版会
    • ISBN
      9784766426557
    • 関連する報告書
      2019 実施状況報告書
  • [備考] 啓蒙時代における美学の誕生(1):井奥陽子『バウムガルテンの美学』をめぐって

    • URL

      https://note.com/kunilabo/n/n8a6b0b9339ec

    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
  • [備考] 啓蒙時代における美学の誕生(2):井奥陽子『バウムガルテンの美学』をめぐって

    • URL

      https://note.com/kunilabo/n/nc7af44f18463

    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書

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公開日: 2019-04-18   更新日: 2024-12-25  

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