研究課題/領域番号 |
19K12984
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01050:美学および芸術論関連
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研究機関 | 武蔵野音楽大学 (2021-2022) 東京藝術大学 (2019-2020) |
研究代表者 |
萩原 里香 武蔵野音楽大学, 音楽学部, 講師 (70783398)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | ユダヤ人 / 舞台芸術 / 北イタリア / ルネサンス / バロック / 踊りのマエストロ / 祝祭 / コラーゴ / フェッラーラ / マントヴァ / イタリア / オペラ / 17世紀 / 芸術 |
研究開始時の研究の概要 |
ルネサンス末期以降、イタリアの宮廷では祝祭時の催しとして舞台芸術(のちのオペラ)が上演され始めた。オペラの誕生と発展に関わる社会背景や人物に焦点を当てて研究を進めるなか、ある都市で、宮廷の貴族たちによる舞台上演の企画制作の中心にユダヤ人がいたという事実が浮かび上がった。欧州全土で「追放」や「隔離」という迫害にあっていたユダヤ人であるが、芸術の才を介してキリスト教社会と共存し、さらには都市の音楽文化発展に大きく寄与していた人物が存在したのである。本研究は、イタリア中北部におけるユダヤ人コミュニティーと都市による保護の関係から、「宮廷ユダヤ人芸術家」と西洋の音楽文化の関わりを取り上げるものである。
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研究実績の概要 |
前年度にイタリアのフェッラーラにおける舞台実践をとりあげた際、ペーザロ出身のユダヤ人、グリエルモ・エブレーオが活動していたことに触れた。当該年度は、彼のような踊りに従事していたユダヤ人の「踊りのマエストロ Maestro di danza」に着目し、彼らのなかには祝祭で全体を統括する任を負う者がいたことを掘り下げた。 ルネサンス末期からバロック時代にかけて、婚姻や戴冠などの祝祭は、プロデューサーのような立場の者を中心に企画されるようになり、舞台上演責任者「コラーゴ corago」や興行主「インプレザーリオ impresario」のような職が確立していった。このようなシステム化された人物が登場する以前、宮廷におけるそのような役割は「踊りのマエストロ」にあったと思われる。 ユダヤ社会においては音楽と踊りの知識は子どもの教育に欠かせないものであり、キリスト教社会において職業制限があったユダヤ人たちは、必然的に職として踊りの教師を選択していた。彼らは、固定で宮廷に雇われるよりもお祝い事があるときに必要に応じて臨時に雇われることが多く、そこでは振付、教育、実践のほか、踊りのための音楽も書いていた。踊りだけではなく音楽にも精通していた、祝祭時には欠かせない存在であったと言える。 彼らが手掛けていた作品は祝祭の目玉と言える富と権力を象徴するものであり、よって、ユダヤ人の活躍が目立つ「踊りのマエストロ」は祝祭を取り仕切っていた存在であったと考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外研究が叶わなかったことで全体的に遅れていたが、研究期間を延長したため、結果順調に進んでいると言える段階にあると考える。延長年度、本研究のまとめを行いたい。
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今後の研究の推進方策 |
ルネサンス時代、ユダヤ人を中心に「踊りのマエストロ」が祝祭を取り仕切っていたことを考察したので、そのケーススタディをあげることで本研究の説得力を増したい。とりわけ、ヴェネーツィアやルッカなどに注目している。さらにバロック時代において、ゲットー設立の広まりの影響で彼らの活躍が見えづらいが、事例を探りたい。
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