研究課題/領域番号 |
19K13014
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
|
研究機関 | 青山学院大学 (2020-2023) 京都造形芸術大学 (2019) |
研究代表者 |
池野 絢子 青山学院大学, 文学部, 准教授 (80748393)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | 秩序への回帰 / 未来派 / 機械 / 形而上絵画 / 前衛芸術 / 前衛美術 / 古典主義 / 前衛 / フォーマリズム / 近代美術 / イタリア / 秩序回帰 / モダニズム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、1910~1920年代を中心としたイタリア美術における「秩序回帰」の動向を、近代性の追求という観点から考察する。「秩序回帰」とは、戦間期にヨーロッパの前衛芸術家たちがそれまでの前衛的な画風を捨てて「古典性」や「伝統」に立ち戻った芸術上の大きな流れのことであり、従来は「後衛」として第二次世界大戦へと向かうナショナリズムの動きに結びつけて理解されてきた。だがイタリアにあってこの動きは、単なる前衛への反動ではなく、むしろ芸術における近代性の問題と結びついていたと考えられる。本研究ではノヴェチェント派周辺の検討を通じて、イタリアにおけるモダニズムの複雑な状況を明らかにすることを目指す。
|
研究実績の概要 |
今年度の研究実績は以下の3点にまとめられる。 (1)マルゲリータ・サルファッティの芸術批評:ノヴェチェント派の主導者として知られる批評家サルファッティの1910年から20年代にかけてのテクストを、ヘルツィアーナ図書館(ローマ)、20世紀アーカイヴ(ロヴェレート)等において収集・分析し、彼女の求めた「近代的古典主義」がいかなるものであったかを論文にまとめた。今後は彼女の古代ローマに対する考えについて調査をすすめ、ファシズムとの関わりについて考察を深めたい。 (2)ジョルジョ・デ・キリコの古典主義時代:戦間期にデ・キリコがローマに滞在した頃、彼の古典主義がどのような発展を遂げたかを検討した。とくに、この時期のデ・キリコが模倣すべき対象として再発見したのが、盛期ルネサンスの絵画であったことは注目に値する。これまでに収集した文献に加えて、ローマ国立近代美術館のアーカイヴに所蔵されているヴァローリ・プラスティチ文庫の資料と突き合わせることで、この時代のデ・キリコの変化をより明瞭に捉えることが可能になった。その研究成果は今後論文にまとめる予定である。 (3)未来派の機械観:未来派が賛美した機械は、デ・キリコらの形而上絵画におけるマネキン像と興味深い対称性を有している。このため今年度は、1920年代の未来派の機械観について集中的に調査を行い、その成果を二度の国際シンポジウムで発表した。この過程で、エネルギーに満ちあふれた男性-機械(プランポリーニ)や女性-機械(フィッリア)、纏うものによって性が変化する機械(シローニ)など、同じ未来派であっても機械のジェンダー表象に複雑な差異が見られることがわかった。この点について調査をすすめ、論文としてまとめたいと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまで新型コロナの影響で海外渡航を断念せざるを得ず、調査が滞ってきた。しかし今年度はイタリアで集中的に調査することができたため、飛躍的に研究が進展した。また、国際会議等でさまざまな国の研究者と意見を交換する機会を得られたことも、本研究の進展にとって大きな後押しとなった。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は本研究計画の最終年度であり、研究実績に挙げたもののうち、(2)デ・キリコの古典主義、(3)未来派の機械観の二つについて、執筆中の論文を完成させ、研究の総括を行いたい。年度中には海外に赴き、フィールドワーク・文献調査も引き続き行うことも検討している。 また、2024年度は公開研究会を実施する予定である。さまざまな研究者と意見交換を行うと同時に、この研究を通じて得られた学術的知見を広く公開する機会を設けたい。
|