研究実績の概要 |
本年度は、まずジャズの歴史記述についての基礎文献である1991年のスコット・デヴォー「ジャズの伝統を構築するConstructing the Jazz Tradition: Jazz Historiography」(邦訳は『ニュー・ジャズ・スタディーズーージャズ研究の新たな領域へ』アルテスパブリッシング、2010年に所収)の論点を整理した。その後、近年のジャズの歴史記述に関する論文( G. P. Solis, 2006, "Avant-Gardism, the Long 1960s and Jazz Historiography"; E. C. Porter, 2012, "Incorporation and Distinction in Jazz History and Jazz Historiography"; M. Dunkel, 2014, "Musikalische Abbildung Eines Pluralistischen Amerikas? Zur Sozialen Funktion Der Jazzgeschichtslehre"; I.Iglesias, 2020, "Beyond romance: Rethinking time and narrative in jazz histories"など)の読解を進め、研究動向についてまとめた。 次に、上述のデヴォーと批評家のゲイリー・ギディンスの共著によるジャズ史のテキストブック『Jazz』(W. W. Norton & Company刊、初版2009年、第二版2015年)、『Jazz: Essential Listening』(W. W. Norton & Company刊、初版2010年、第二版2019年)を対象に、言及されているレパートリーをデータ化し、ナラティヴの変遷を調査した。 さらに、比較対象として、ジャズの演奏家・批評家であるテッド・ジョイアが著した『The History of Jazz』(Oxford University Press刊、初版1998年、第二版2011年、第三版2021年)を対象に、言及されているレパートリーをデータ化し、ナラティヴの変遷を調査した。
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