研究課題/領域番号 |
19K13031
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01070:芸術実践論関連
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研究機関 | 芸術文化観光専門職大学 (2022) 神戸大学 (2019-2021) |
研究代表者 |
小林 瑠音 芸術文化観光専門職大学, 芸術文化・観光学部, 講師 (60825850)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2019年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 英国 / コミュニティ・アート / 文化政策 / アーツカウンシル / 社会関与型の芸術 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、英国コミュニティ・アートの歴史的変遷と国際的影響について、新たに文化政策の観点を導入し、その再検討を行うものである。コミュニティ・アートと文化政策との間のジレンマをトランスナショナルな課題として議論すべく、複数地でのフィールド・ワークに着手する。そのうえで、各コミュニティに根ざしたローカルな芸術実践がいかにしてグローバルな連関をもちうるのかという新たな問いの解明に挑む。具体的には、以下の2点、1)ロンドン以外の地域を含む現地調査の継続、2)英国外における人的連関の解明、を課題とし、芸術と政策の攻防を如実に表してきた英国コミュニティ・アートの変遷と実態を捉える実証研究の推進に取り組む。
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研究実績の概要 |
本研究は、「社会関与型の芸術」の中でも先駆的な事例である英国コミュニティ・アートの歴史的変遷と国際的影響について、文化政策の観点から再検討を行うことを目的とする。具体的には、英国コミュニティ・アートの変遷と実態を捉える実証研究、特に以下の2つの課題、1)ロンドン以外の地域を含む現地調査の継続、2)英国外における人的連関の解明、に取り組む。課題1)については、エディンバラとバーミンガムを中心に、新たな調査に着手し、英国における文化政策の地方分権化について、その歴史的変遷を検証する。課題2)については、1970年代より英国との間で密接な相互関係を維持してきた豪州をはじめとする海外の事例に着目し、これまで検証されてこなかった英国のコミュニティ・アート運動との通時的・共時的連関を解明する。 2019年度は一身上の都合により研究の続行が困難となり(補助事業期間の延長が承認済)、また2020年度から2022年度は、新型コロナウィルスの影響によって、当初予定していた英国と豪州での現地調査および研究成果の公刊計画は大幅な変更を余儀なくされた。他方、これまで収集した聞き取り調査や文献資料のデータ整理と分析を着実に遂行することで、新たな課題を発見し、当事者へのさらなる補足的聞き取り調査をオンラインで進めてきた。特に、2022年度は、課題1)については、エディンバラやバーミンガム、リバプールを拠点にした事例について、新たな文献資料の読み込みとともに、アーカイブの進展およびパンデミック以降の実態を総括した単著の執筆・編集に努めた。課題2)については、UNESCO,欧州評議会での文化政策に関する議論、特にフランスにおける「アニマトゥール」の実践手法の習熟に努めた英国のコミュニティ・アーティストたちの動向に着目し、英仏間の人的連関を明らかにした。これらの成果をまとめた単著を、2023年3月末に上梓した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度に関しては、一身上の都合により研究の続行が困難となり補助事業期間延長が認められたため、当初の研究計画に大幅な変更を加えた。加えて2020年度から2022年度は、新型コロナウィルスの影響で海外渡航や国内移動が不可となったため、さらなる研究計画の修正を加えせざるをえない状況になった。 2022年度までの進捗状況として、課題1)「ロンドン以外の地域を含む現地調査の継続」については、まずエディンバラの「クレイグミラー・フェスティバル・ソサエティ」、バーミンガムの「ジュビリー・アート」と「テルフォード・コミュニティ・アート」およびリバプールを拠点にした「ブラッキー」などに関して、新たにオンライン上で公開されたアーカイブ資料の分析を中心とした文献・映像調査を進め、その成果を単著にまとめた。 課題2)「英国外における人的連関の解明」については、1970年代当時の英国コミュニティ・アートの発展に大きな影響を与えた、大陸ヨーロッパでの文化政策に関する議論に着目し、1970年代のユネスコや欧州評議会の文化大臣会議においてとりあげられた共通の課題を明らかにするとともに、当時の報告書や議事録をもとに分析をおこなった。加えて新たに、南米の「民衆文化運動」や米国の「コミュニティ・オーガナイザー」の思想的影響を受けた英国内の「オルタナティブ・シアター運動」とコミュニティ・アート運動の関係性を明らかにし、演劇史やコミュニティ運動史においてこれまで整理されてこなかった重要な論点を提示した。 成果発表としては、これまでに論考を2本(共著書籍とオンライン上の寄稿論考各1本)公開に加えて美術展や関連書のレビュー寄稿を2本、および日英コニュニティ・アートの比較分析に関する公開講演(対面1回、オンライン1回)を行った。新たな論稿を加えた研究成果を単著にまとめ、2023年3月末に公刊した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに実施予定だった現地調査については、新型コロナウィルスの状況に鑑みつつ、2023年度に渡航を計画している。今後、本研究における2つの課題について以下の予定で調査を進めていく。 課題1)「ロンドン以外の地域を含む現地調査の継続」については、エディンバラ大学、エディンバラ中央図書館、リバプールの「コミュニティ・アート・センター」、ブリストル大学「シアターコレクション」、シェフィールド大学、バーミンガム近郊のスメスウィック図書館にて資料調査を実施する。同時に、英国のコミュニティ・アート研究およびカルチュラル・デモクラシー研究の第一人者と現在も継続的にコンタクトをとっており、具体的にロンドン大学キングスカレッジの研究者らとともに定期的な研究会を実施している。 課題2)「英国外における人的連関の解明」については、当初予定していた豪州の事例について本格的な現地調査に着手する。研究代表者は既に豪州にて予備的な資料調査に着手しており、1970年代からエディンバラやロンドンに拠点を置く英国コミュニティ・アートの実務家が豪州に移住し、現地で新たな活動を設立していた事例等を明らかにしてきた。今後さらに、英豪間を行き来した実務家やアーティストの言動を追い、それらを後押しした中間支援組織や豪州アーツカウンシルの影響を検討する。今後、その内容に関する研究会を国内外の専門家および実務家を招いて開催する予定である。同時に、新たに着手する現地調査の結果については、国内外の学会にて口頭発表を行うとともに、関連する学会誌に投稿する。 なお、新型コロナウィルスの影響で海外への渡航が困難となった場合には、引き続き、既に入手している文献と一次資料の読み込みと整理、オンライン上での聞き取り調査を遂行する予定である。
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