研究課題/領域番号 |
19K13036
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01070:芸術実践論関連
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研究機関 | 多摩美術大学 |
研究代表者 |
チン ホウウ 多摩美術大学, 日本画, 講師 (80838590)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 楮 / 画紙 / 麻紙 / 和紙の歴史 / 紙本 / 日本画 / 墨 / 紙 / 水墨表現 |
研究開始時の研究の概要 |
現代の日本画は、主に画紙をキャンバスのように用いて、絵具の厚塗りによって画紙の地を残さない表現の中で、日本画家はその独自性を発揮している。しかし、台湾で水墨表現を学び、日本では日本画を学ぶ申請者の視点では、画紙の特性を無視したマチエール偏重の表現に疑問を呈せざるを得ない。そのため申請者は水墨表現のように画紙の中に絵具や墨などを染みこませ、画紙自体が日本画の新たな表現の一部として機能すると考えている。そこで水墨表現の作品調査によって、特定の支持体でしか出来ない表現の独自性を再評価し、現代における日本画の表現と水墨表現を融合し、画紙の特質を活かした新しい日本画の表現方法を確立することを目的とする。
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研究実績の概要 |
和紙の原料である楮はクワ科の落葉低木樹であり、産地は全国に分布している。よって、和紙において、楮が最も多く使われている原材料である。また、地域・気候・土地環境の差によって、靭皮繊維の品質が異なり、抄造された紙も特質が異なると考えられる。 日本では聖徳太子が楮の栽培を普及させ、701年美濃・筑前・豊前各国の戸籍用紙に楮紙が使われていたなど、古くから和紙の原料として広く利用されてきた。江戸時代になると、和紙の国産奨励策により、栽培が盛んになり、山間村落にとって貴重な収入源の一つであった。しかし、明治以降森林の植林活動の奨励によって楮農家が減少し、また、生産農家の高齢化及び後継者不足などにより、国産楮の不足問題に直面している。筆者の聞き取り調査によると、国産楮が不足のため現在海外から輸入される場合は少なくない。 日本の三大楮の1つである八女楮を調査するため、福岡県八女市で現地調査を行った。八女手漉き和紙はその起源が古く、文禄年間に発して以来380年の歴史を有し、筑後和紙の名において古くから世人の推奨を得て本日に至った。八女楮の特徴は、繊維が長いことである。八女楮が平均10.4ミリの長さであるという特徴が、強靭な和紙がつくられる理由である。しかし、楮農家の減少とともに、八女の手漉き和紙製造者も減少傾向にあると見られる。明治45年の1779戸が最多記録とし、大正期には1300から1400戸の製造者がおり、生産量がまだ安定していた。ところが、昭和3年頃から884戸まで減少し、その後、製造者数が減少し続け、昭和48年には27戸しか残っていない。さらに、2022年5月に筆者が聞き取り調査を行った結果、手漉き和紙製造者は6戸しか残っていないことが分かった。このように、1000年も持つ和紙は現在、紙漉き製造者や楮農家の後継者不足の問題に直面している。使用者の我々にとっても大事な課題であると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度から2021年度にかけて日本国内の画紙をめぐる歴史的調査及び実践研究を行った。そして、2022年度において、画紙の原料の産地、繊維の分析について調査を行った結果、地域・気候・土地環境の差が、紙の原料である楮の成長に影響を及ぼす重要な要素であることが判明した。よって、日本全国の画紙に異なる特質が見られる。画家は画紙を用いる際に、画紙の特質を活かし、さらなる独自の技法を展開したことがわかった。ただ、本来研究を予定している東アジアの製紙に関する調査、また、研究成果の発表はまだ完成してないため、一年延長することに至った。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度には、以下の2つの方向で本研究を進めていく。 一つ目は、東アジアの画紙についての調査である。近代の日本は植民や国際友好親善を促進するため、東アジアにおける文化活動とは密接していると考えられている。紙の製造方法は大陸から朝鮮半島を経由し日本に伝来したと言われている。それ以降、長い年月を経て日本は製紙方法を改良し、原料の違いにより、独自な和紙および画紙が完成された。東アジアの中で、台湾および韓国においては、画紙として棉宣紙と韓紙が主に使われている。本研究では、それらの独自な手漉き紙と日本の和紙の発展を明らかにするために、現地調査を行う。 二つ目は、研究成果の公開である。本研究の考察の成果として、展覧会『紙の水墨・水墨の紙-日本画の新たな可能性-』を開催する。実践研究の成果(作品)は日本、台湾で公開展示する予定である。そして、展覧会の開催とともに調査報告書「近代日本画における画紙の特質による技法の展開および実践研究報告書」(仮題)を作成し、パネルの設置による公開展示を行う予定である。
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