研究課題/領域番号 |
19K13089
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02020:中国文学関連
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
松浦 智子 神奈川大学, 外国語学部, 准教授 (40648408)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 明代内府 / 彩色絵図本 / 識字層 / 視覚文化 / 岳飛 / 楊家将 / 西遊記 / 列国志 / 通俗文学 / 木蘭 / 坊刻絵図本 / 宦官 / 書肆 / 中国近世通俗文芸 / 明内府彩絵鈔本 / 絵図本 / 陽明学 / 挿画 |
研究開始時の研究の概要 |
明中後期、出版文化の隆盛の中で、大量の通俗文学が挿画・絵図という視覚文化を活用しながら出版された。通俗文学に付されたこれらの絵図情報が読書行為に及ぼす影響に着目した本研究では、明内府制と推定される①彩絵『出像楊文広征蛮伝』、②彩絵『大宋中興通俗演義』、③彩絵『全像金字西遊記』、④彩絵『春秋五覇七雄通俗演義列国志伝』という彩絵本の通俗文学作品群を、A:書籍の体裁、B:内容・ジャンル面から三年かけて検証していく。これにより、①~④の制作背景・意図を析出し、そこから未解明部分の多い明中後期の通俗文学の受容層・供給者の実態や、不明点の多い近世中国の基層文化と上層文化の繋がりの一端を明らかにしていく。
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研究実績の概要 |
本研究は、①彩絵『出像楊文広征蛮伝』、②彩絵『大宋中興通俗演義』、③彩絵『全像金字西遊記』a本b本、④彩絵『春秋五覇七雄通俗列国志伝』という明内府制の彩絵小説群の制作・受容の諸相について、周辺の彩絵本・経典、絵図本等を用いて考察するものである。この研究は、本来2019年度~21年度までの三カ年で行われる予定であったが、19年度末より始まったコロナの影響で、20年度~22年度の間、調査遂行に制限がかかったため、その実施期間を23年度まで延長することとなった。合計五年間の成果は次の通りである。 まずコロナ前の19年度には、①②の「宋代もの」彩絵小説を検証し、①②が明内府で制作・受容された背景に、宋代尊重の政治気風や宦官勢力の自己宣伝が存在したことを明らかにした(論文「明代内府で受容された宋の武人の絵物語―とくに岳飛の物語から」)。 一方、コロナ期間の20~22年度には、電子・オンライン媒体や、利用可能な近郊の研究機関、図書館を活用し、②の関連文芸が異域で受容される際にも絵図が利用された事を指摘する論文「日本における岳飛“文芸”の展開」を執筆したり、③の制作・受容を検証した「明代内府繪圖本文化初探─以西遊記的彩色繪圖本爲中心」を台湾中興大の学会でオンライン発表する等した。 他方、コロナの影響による諸般の制限などから、本研究には未解明部分が残っており、調査の継続が必要となった。そこで上記の検証と共に後継の科研基盤C課題「明内府彩絵通俗文学と絵図本など視覚文化から見た新興「読者層」の諸相」を申請し採択もされた。本研究(若手研究)の最終年である23年度は、残りの資金を用いて天理大図書館や杏雨書屋所蔵の彩絵本や関連絵図本を複写しつつ、継続の基盤C課題を積極的に推進し、三つの国外学会と一つの国内学会で口頭発表をし、その他論文二本を執筆した。その成果の詳細については基盤Cの報告書に記す。
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