研究課題/領域番号 |
19K13097
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 学習院大学 (2021-2023) 茨城大学 (2019-2020) |
研究代表者 |
桐山 大介 学習院大学, 文学部, 准教授 (60821551)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | ラルフ・エリスン / アフリカン・アメリカン文学 / アメリカ南部 / アフリカン・アメリカン文化 / ウィリアム・フォークナー / アメリカ・モダニズム小説 / 物語構造 / 人種問題 / モダニズム / 歴史意識 / 人種 / アメリカ文学 / マイグレーション |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、アフリカン・アメリカン作家ラルフ・エリスンとアメリカ南部白人作家ウィリアム・フォークナーの小説に「放浪する黒人男性」というモチーフを軸とした類似の物語構造を見出し、それによって表される人種概念を検討することで、フォークナーからエリスンへの直接的な影響があったことを実証する。またフォークナーとエリスンがその物語構造を通じて社会的人種言説と個人的感情の交錯を描いたこと、それにより20世紀前半から中盤のモダニズム美学や、ジム・クロウ期から公民権運動の時代に至るまでの一般的な人種概念の理解を超え出ていたことを明らかにする。
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研究実績の概要 |
新型コロナウィルスの影響で延期になっていた、アメリカ議会図書館における資料調査を実行した。今回調査したのは主にラルフ・エリスンの未出版の第二長篇小説の草稿である。特に、晩年において何度も改稿が試みられたワシントンDCおよびオクラホマシティを舞台としたシーンの草稿について、重点的に調査を行った。その結果、執筆後年におけるエリスンの南部・南西部におけるネイティヴ・アメリカンの存在に対する意識の高まりを確認することができた。 本研究の文脈に照らせば、それは放浪する黒人男性と故郷との関係の問い直しにつながるものである。エリスンのキャリア初期においては「政治的課題」として捉えられていた「国家の故郷」たる南部は、『見えない人間』完成稿において民俗的文化に基づく美学の故郷として書き換えられ、それはエリスンにとっての政治的可能性の源泉となった。さらにその後、エリスンは自らの故郷である南西部の地オクラホマを、そのような美学によって成り立つ、自由と可能性に満ちた一種のユートピアと捉えるようになる。しかし後年のエリスンの第二長篇改稿の過程が示すのは、楽観的な南部・南西部観に対する自己批判的な視点である。それは黒人たちと同様に、あるいはそれ以上に苦しみの歴史を負ったネイティヴ・アメリカンの描写を通じてなされ、それによって「故郷」の概念はさらに複雑化されることになる。 しかし、エリスンのネイティヴ・アメリカン描写に問題がないわけではない。ネイティヴ・アメリカンの苦難の歴史は、時に黒人の苦難を一種比喩的、類推的に表すために利用されてしまい、それ自体の重要性が薄められてしまうことがある。 エリスンの改稿過程の調査は、このようにエリスンの「故郷」をめぐる後年の発展と新たな課題を明らかにすることになった。2023年度はまたこれらを論文にまとめる準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスの影響で、本研究に必須な資料調査が遅れたため。当該調査は2023年度に実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に実施した資料調査に基づき、エリスンの第二長篇の特に晩年における改稿過程に着目した論文を執筆し、本研究を完成させることが目指される。
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