研究課題/領域番号 |
19K13099
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 多摩美術大学 |
研究代表者 |
中嶋 英樹 多摩美術大学, 美術学部, 講師 (70792422)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | モダニズム / 注意力 / 注意散漫 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は1880年代から1920年代のイギリス文学における「印象主義」や「意識の流れ」などの心理にまつわる小説技法を、「規範」や「規律」の基盤として当時の心理学において論じられていた「注意力」およびその対となる「散漫な注意」という概念との関連から論じるものである。「注意力」という認知作用の歴史性を調査し、20世紀初頭ごろの注意力概念の特異性を解き明かし、心理学的言説における「散漫な注意」への関心が当時の文学作品においてどのような文体上の特徴として表出しているかを解明することを目指す。
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研究実績の概要 |
前年度から引き続き、(1)注意力をめぐる1900年前後の心理学言説に関する整理を進めるとともに、(2)上記の整理を反映した、個別作家研究(ヴァージニア・ウルフ、フォード・マドックス・フォードなど)を進展させるという、2つを軸に研究を進めた。 (1)については、Carolin Duttlinger (2022) による、ドイツの注意言説を扱う研究書が出版され、英国を扱う本研究にとっても大きな参照項となった。とくに、後述のヴァージニア・ウルフ『船出』を扱った論考では、心理学言説の歴史性を記述するための大きな助けとなった。さらに個別的トピックとしては、『船出』論考を執筆するなかで、分割的注意(divided attention)に関する研究や、ジェンダーと注意力の程度を論じる心理学言説などを集中的に収集した。 (2)については、V・ウルフ『船出』に関する論考を国内の雑誌に投稿した(現在、査読中)。本作については、草稿研究の成果を参照するなど、追加的な資料収集も行っている。 最後に、当初の予定にはなかったが、日本英文学会関東支部第22回大会にて、シンポジウム「亡霊文学を見つめ直す」を企画することとなった。扱うトピックは亡霊文学および亡霊論的転換(the spectral turn)と呼ばれる研究のトレンドであり、一見したところ、本研究とのつながりが見えないが、注意力の高まった状態は、たとえば、催眠やトランスといった状態として、亡霊文学に頻出するものであり、注意力を社会的規範と見なす(1)で整理した枠組みの再考を迫る契機、あるいは、本研究を発展させる方向性の一つになり得るものといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
個別作家研究を進めるための心理学言説の調査がやや不足しており、当初の予定よりも進度に遅れが見られるため。
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今後の研究の推進方策 |
個別作家研究を進め、投稿論文を準備する。また、注意力と文学の関係についての概観論文の執筆も完了させる。前者については、V・ウルフ『船出』を論じるなかで生じた、「女性の注意力」というトピックを、おなじ作者による『灯台へ』のなかで考察する。後者については、プロジェクト全体を見通す視座を与える論考とする。
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