研究課題/領域番号 |
19K13119
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 神戸大学 (2023) 立教大学 (2019-2022) |
研究代表者 |
中村 麻美 神戸大学, 国際文化学研究科, 講師 (80827709)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | サイエンス・フィクション / スペキュラティブ・フィクション / ノスタルジア / 記憶 / ジェンダー / セクシュアリティ / ユートピア / ディストピア / マーガレット・アトウッド / カズオ・イシグロ / サイボーグ / フェミニズム / ポストヒューマン / ジョージ・オーウェル / ジェンダー・セクシュアリティ / 共感性 / ポスト・ヒューマン / ジェンダー・セクシュアリティ― / フェミニスト・ディストピア / クィア理論 / ディストピア文学 / ジェンダー・セクシュアリティー |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は主に20世紀から現代におけるディストピア文学・SFの読解を通じ、ノスタルジアという情動が如何に社会批判のレトリックを構成するかを吟味し、その諸相を解明する。具体的には(1)Ishiguroの諸作品におけるノスタルジアの美学化(2)Grayの_Lanark_における故郷グラスゴーの神話創造(3)Dickの諸作品におけるノスタルジアとシミュレーション(4)Le Guinの諸作品における帰郷概念・ノスタルジアにおけるジェンダー差といった問題群を究明する。社会批判を過去(記憶)と未来(想像・創造)という時間的側面から検討し、毒、また薬/媚薬ともなり得るノスタルジアの逆説性を探求する。
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研究成果の概要 |
本研究は二十世紀後半以降の英語圏ディストピア文学ないしSFにおけるノスタルジアの政治性を、特にジェンダー・セクシュアリティの視点から考察・分析するものである。ディストピア文学は個人を独立した自律的存在でなく、社会システムの所産として描き出しながら、現実社会を異化する。ここで、社会的想像力を描くディストピア文学におけるノスタルジアは、個人の感情にとどまらず、政治的意味合いをまとう。本研究はノスタルジアの主体の多様性に着目することで①マイノリティによる過去の修復的再想像の術としてのノスタルジア、そして②伝統的性役割の復興や、原始的自然へ回帰といった思想を強化する情動としてのノスタルジアを解明した。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
ノスタルジアとは自身が「ホーム」と名指す場所、ひいては過去を切望する情動を示す。ここで、ディストピア文学が「ユートピア的」とされる所以の一つに、多くの作品において、過去を切望し理想化するノスタルジアが、非理想的な未来への不安と対置されていることが挙げられる。「いま・ここ」を拒否、あるいは迂回するノスタルジアに注目することで、社会批判のレトリックを多角的に読解する術を提示することができたと考える。
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