研究課題/領域番号 |
19K13143
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 白百合女子大学 |
研究代表者 |
村中 由美子 白百合女子大学, 文学部, 准教授 (40791174)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | マルグリット・ユルスナール / ジェンダー / 戦間期 / 庭 / カヴァフィス / 戦間期フランス文学 / 20世紀フランス文学 / クロード・カーアン / アゴタ・クリストフ / ヴァージニア・ウルフ |
研究開始時の研究の概要 |
戦間期のフランス文学に描かれたジェンダーの流動性を分析する。マルグリット・ユルスナール、クロード・カーアンを始めとするフランス人作家を中心とし、ヴァージニア・ウルフの作品も扱う。これらの作家の作品に頻出する、一般的な性の概念を逸脱するような登場人物や、仮装によって生まれの性とは異なる性をまとう登場人物たちに着目し、この時代におけるジェンダーの描かれ方の特徴、そこから導かれるジェンダー観を検証する。それを踏まえ、男/女という二元的なジェンダー観に対する疑義が読み取れる戦間期の文学作品を広く読み解きながら、そのような疑義が生じた社会的背景、さらに女性作家たちの社会におけるスタンスを明らかにする。
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研究実績の概要 |
「戦間期フランス文学におけるジェンダー観の揺らぎと女性作家の社会的スタンス」と題された本研究は、マルグリット・ユルスナールの作品を中心に、同時代の女性作家たち(クロード・カーアン、ヴァージニア・ウルフら)の作品も踏まえた上で読み取れる新しいジェンダー観を抽出しようとするものである。 2023年度は、19世紀から21世紀に至るまでのフランス書簡体小説をめぐる国際シンポジウムで発表する機会をいただいたため、ユルスナールの初期作品『アレクシス、あるいは空しい戦いについて』(1929)を書簡体小説という形式に着目して再考する機会となった。この小説の発表当時は、アンドレ・ジッドの自伝的作品『一粒の麦もし死なずば』(1926)の出版等によって同性愛が文学的なテーマとして登場し始めた時代であり、ユルスナールは時流に乗ったと言えるが、小説家としての最初の出版作品の主人公として、同性愛者かつ芸術家である人物を選んだことは、本研究にとって大きな意味のあることだと考えられる。同性愛的な気質を妻に告白する書簡体小説の形式を取った本作品には、主人公が従来のジェンダー観にとらわれない自らのありのままの姿を告白することで芸術家としての誕生を果たした過程が描かれていると考えられる。この過程はまさに、本研究で明らかにしようとする「ジェンダー観の揺らぎ」であり、真のジェンダーを受け入れることが芸術の実現につながるというこのテーマが、のちのユルスナール作品でどのように変奏されていくのか、また他の作家の作品とどのように響き合っているのかを今後考えていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響は落ち着き、海外への渡航もしやすくはなってきたものの、依然として先の見通しが立たなかったことで長期の文献調査を実施できていないため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度必ず実施したいこととしては、アメリカ・ハーバード大学でのユルスナールの草稿調査である。以前の調査で閲覧しきれなかった資料が、本研究にとって非常に重要であることがわかっているため、研究最終年度の本年度に必ず実施したい。 もうひとつの推進方策としては、戦間期にとどまらないフランス女性史の研究である。現在、そのテーマでの翻訳の機会をいただいているため、この作業を通じてジェンダー観の形成を長期的なスパンから再考したい。
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