研究課題/領域番号 |
19K13198
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02070:日本語学関連
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研究機関 | 白百合女子大学 |
研究代表者 |
川瀬 卓 白百合女子大学, 文学部, 准教授 (80634724)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 副詞 / 語用論 / 不定 / 助詞 / 行為指示 / 感動詞 / 定型的あいさつ表現 / 時代的動向 / 呼応 / 不定語 / 文法変化 / 歴史社会言語学 / 歴史語用論 / 古代語 / 近代語 / 間接疑問 / 分析的傾向 / 日本語史 / 係助詞 / 副助詞 |
研究開始時の研究の概要 |
「何やら」「どこぞ」「誰か」のように、不定語(疑問詞とも呼ばれる)に下接する助詞「やら」「ぞ」「か」を不定の助詞と言う。本研究は、不定の助詞の地域差と歴史的推移を明らかにするとともに、不定語と助詞が結びついて「なんぞ」「なんか」などの副助詞に変化するといった関連する文法変化を明らかにすることを目的とする。 本研究は、中央語のみを対象とした単線的な日本語の歴史ではなく、言語の社会的位置づけと言語間の影響関係なども視野に入れた複層的な日本語の歴史を描くことや、係り結びの衰退が日本語の文法や語彙に与えた影響について従来の研究とは違う角度から明らかにすることにもつながるものである。
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研究実績の概要 |
2023年度における研究業績は、以下のとおりである。
①【発表】「副詞「どうぞ」の歴史変化追考」2023年度九州大学国語国文学会、於九州大学、2023年6月10日、②【発表】「人情本における不定の「ぞ」「やら」「か」」第296回筑紫日本語研究会、於九重共同研修所、2023年8月17日~19日(発表日は18日)、③【発表】「「どうぞ」の歴史変化再考―〈勧め〉への変化と定型的表現化―」2023年度第4回TAME研究会、於筑波大学、2023年9月27日、④【シンポジウム・講演】「副詞を通して見えてくる古代語と近代語の相違」、対照言語行動学研究会第21回研究会、於東京工業大学大岡山キャンパス、2023年10月14日、⑤【論文】「副詞「どうぞ」の歴史変化―変化の語用論的要因に注目して―」『日本語文法』24巻1号、pp.71-87、2024年3月、日本語文法学会
①近世後期江戸語から近代(明治・大正期)までの「どうぞ」の歴史変化を語用論的観点から考察したものである。②は江戸語から東京語における不定の「か」の発達を明らかにする準備(中間報告)として、人情本において不定の助詞がどのように用いられているのか調査した結果を報告したものである。③は①の発表内容をさらに発展させたものである。新たに昭和期以降の調査も行い、「どうぞ」が聞き手利益の行為指示で使用される副詞に変化する語用論的要因、「どうぞ」の定型性増加(感動詞的用法の発達、および定型的あいさつ表現への変化)、不定の「か」の発達に伴って行為指示の副詞となった「どうか」が「どうぞ」の歴史に与えた影響などを明らかにした。この成果は論文として⑤にまとめた。④は「副詞から見る日本語表現の流れ」というテーマのシンポジウムで講演したものである。副詞を通して日本語の時代的動向を把握することの可能性について、見通しを述べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
不定の助詞の歴史的推移と関わる副詞「どうぞ」の歴史変化について、語用論的観点から明らかにできた点は、当初の予定よりも進んだ成果が得られたと言える。一方、不定の助詞の歴史的推移については、人情本を資料とした調査と分析ができたものの、遅れを十分に取り戻すには至らなかった。以上を総合すると、やや遅れていると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、研究課題で十分に進められていない点があることと、旅費をはじめとして執行できていない経費の残額があるため、補助事業期間の再延長申請を行うこととした。 引き続き、不定の「ぞ」「やら」「か」のデータ収集や分析作業を行う。必要に応じて学生による研究補助も依頼する。
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