研究課題
若手研究
本研究の目的は未だ研究が進んでいない日本語教育における「高次能力学習型」の反転授業の有効性の検証である。日本語教育における反転授業に関する先行研究では主に初級から上級の学習者を対象に文法教育等での完全習得学習型反転授業が行われ、その効果検証もされているが、高次能力学習型の反転授業の実践及び効果検証はほとんどされていないのが現状である。そこで本研究では、高次能力学習型反転授業の実践を行い、その実践で得られたデータを基に学習成果分析、学習者特性分析を行うことによって、その有効性の検証を行う。本研究による分析結果は日本語教育の分野だけでなく、外国語教育にも貢献でき、有益な指標となることが期待される。
留学生を対象としたアカデミック・プレゼンテーション能力養成クラスで高次能力学習型の反転授業を実施し、その効果を検証した。その結果、アカデミックCan do statementsのCEFRのAレベルでは差が見られなかったが、B/Cレベル及び全体平均では反転授業実施クラスの方が有意に高い結果が得られた。予習動画の視聴率分析では、既有知識に関する内容は視聴率が低く、高次能力・アカデミックスキルに関する内容は視聴率が高いこと、動画の長さと視聴率には高い負の相関があり、9、15分後に視聴率が大幅に下がることが確認された。学習者は予習動画と反転授業の形式を概ね肯定的に評価しており、その有効性が示唆された。
本研究の成果は、第一に、日本語教育の分野ではほぼ未開拓である高次能力学習型反転授業の有効性を検証したことである。知識・スキルの獲得を予習動画において学習し、運用面の練習及び振り返り、教員によるフィードバックを授業時間に行うという授業形態は機能しており、高次能力学習型の反転授業の有効性が示唆された。それらは、高次能力養成を行う日本語教育の効果を高め、学習者に多様なスキルを身に付けさせることで、学術的にも社会的にも大きな意義を持つと考える。また、高次能力を養うための具体的なカリキュラムや教材の開発に寄与する成果を出すことができたと思われる。
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ポスト・コロナ時代の留学生教育:関西大学留学生別科の挑戦と展望
巻: なし ページ: 125-139
池田佳子編著『ポスト・コロナ禍時代のグローバル人材育成―大学の国際教育のパラダイムシフト』
巻: 0 ページ: 27-38