研究課題/領域番号 |
19K13273
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02100:外国語教育関連
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
畑 和樹 東京都市大学, デザイン・データ科学部, 准教授 (70803477)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2019年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | コードスイッチング / 言語選択 / 会話分析 / 相互行為 / 修復・訂正 / 言語交替 / 修復 / 訂正 / 修復活動 / 媒介語 / 連鎖組織 / 媒介言語 / 授業内秩序 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、状況に即さないコードスイッチング(言語交替)に内在する「非適切さ」の原理と、それに対処する効果的な教師的行為のメカニズムを解明する。英語を媒介語とする教室内相互行為において、媒介語への非規律的志向は活動の進行を阻害することが示唆される。これについて本研究は、①英語を媒介語とするコミュニケーション活動における「状況に即さない母語の使用」の本質を明らかにし、②その「非適切さ」に対して教師が行うべき効果的な介入手続きを見出す。また、③異なる教室環境ごとのコードスイッチングの適切性、普遍性および各環境に存在する異質性を明示することで、英語を媒介する学習活動の意義や内在する課題の記述を試みる。
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研究実績の概要 |
本課題は英語教室活動における言語選択に注目するものである。これまで、規律から逸脱する言語選択の構造、および教師が行う特定の修復・訂正技法を明らかにしてきた。
① 会話参加者が行う言語選択の適切性は相互行為の中で判断されるものであり、単に「英語を介する活動で日本語を使うこと」が即座に問題となるわけではない。生徒が英語で答えるべき状況で日本語を用いた場合、教師はその問題を指摘し、授業目的に則する回答を求めるべく修復を試みる。一方、同じ環境であるにもかかわらず、教師による修復を受けない特定の日本語発話を確認した。このような事例に共通することは、日本語発話が、先行する英語発話の日本語訳、あるいは情報を補足する日本語となっていたことである。受け手である教師は、日本語で与えられた情報を基に英語発話の訂正を行う、または、必要に応じて日本語発話の内容を英語発話に組み入れられるかたちで代案を出す。すなわち、生徒が母語を選択することは、(先行研究で示されたように)自信のなさ、あるいは学習言語を使うことへの躊躇いを意味するかは別として、受け手である教師にとって、学習者自身が「本来言いたかったこと」と「実際に発話したことの」の差異を認識するための資源となる。
② 教師が学習者の言語選択が逸脱であると判断した場合、そこで開始される修復の一例を明らかにした。学習者による母語選択には、その時々における何らかの困難さを当座的に解決する側面が認められる一方で、困難さの詳細まで教師に開かれるわけではない。むしろ、様々な課題が考えられる状況と言える。そのような場面で、教師は"In English"の構成を用いて、あくまで規範からの逸脱への対処を優先し、先行発話のやり直しを要請する。この教師の手続きは、先行する言語交替の理由、そして訂正の要否を判断するための過程であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度に始まったコロナ禍の影響でデータ収集が遅れた、分析の進捗が本来の計画より大幅に遅れてしまった。含蓄された成果を論文化するプロセスにも想定より多くの時間を要した。しかしながら、2021年度時点で課題を遂行するうえで十分なデータが集まり、分析から得られた知見を公表することはできている。現在は2022年度迄に得られた「ハイレックス授業」のデータを含めて分析を続けているが、最後に掲載した論文以降、いまだ公表できるレベルの成果は出ていない。
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今後の研究の推進方策 |
現在保持しているデータには、更なる検証が求められる興味深い現象がある。これらを検証していきながら、研究課題に新たな視点を加えていきたい。特に、2020年に掲載済みの論文査読プロセスにおいて、本課題の一部データは「Translanguaging」の観点で検証してはどうかという有益なフィードバックをいただいている。複数の(媒体)言語を扱う研究課題として、日本語か英語かといったバイナリな視点にとらわれず相互行為上の働きを分析していくことは、本課題が目標とする教室内活動における言語の本質を検証するうえで、また本テーマを今後さらに発展させるうえで重要である。 また、生徒による母語利用の性質を更に解明していく目的のもと、(科学研究費を用いて出張した)他の研究機関の研究者と共同研究をすることとなった。いまだ計画段階ではあるが、本課題を継続して遂行することで、企画している共同研究を25年度から速やかに開始できるよう準備していきたい。
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