研究課題/領域番号 |
19K13317
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分03010:史学一般関連
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研究機関 | 東京工業大学 (2022) 京都大学 (2019-2021) |
研究代表者 |
鈴木 健雄 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 講師 (80792374)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | ドイツ系亡命者 / 反ナチス抵抗運動 / 小規模社会主義組織 / ISK / Neu Beginnen / レオナルト・ネルゾン / ラジオプロパガンダ / 心理戦 / 戦後ドイツ |
研究開始時の研究の概要 |
第二次世界大戦下、英米による対独「心理戦」には、ヒトラー政権誕生後、祖国を離れたドイツ系亡命者もまた参加していた。彼らに関する研究ではこれまで、考察対象が卓越した個人または連合国側の対応に限定されるとともに、考察期間も同大戦中に限定されてきた。その結果、亡命者の心理戦への参加は、一時の個別的エピソードとして扱われる傾向があった。対して本研究では、対独心理戦のうちラジオプロパガンダに参加した集団に着目する。さらに検討時期を心理戦参加前から戦後ドイツ占領統治期までと広く取ることで、そこでの経験が亡命者個人と集団にどのような変化をもたらし、その変化が戦後の彼らの活動にどう影響を与えたかを検討する。
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研究実績の概要 |
本研究は、対独ラジオプロパガンダに参加したドイツ語圏からの亡命者(以下、「ドイツ系亡命者」)を手掛かりに、1930年代後半から1949年にかけての彼らの活動と思想の中に、ラジオプロパガンダの経験を位置付けることで、同時期の言論空間の形成過程の一端を解明しようとするものである。ISK(国際社会主義闘争同盟)とNeu Beginnen(新規まき直し)という小規模社会主義組織の構成員を主たる検討対象とする。 22年度は、前年度から引き続き、ISKの亡命以前の動向を追った。あえて亡命以前の動向を追った理由であるが、これは、ナチズム体制に代わるどのような国家体制を理想としたのかを考察する上で、ISKが元来理想としていた社会主義のあり方を把握する必要性のためである。検討の結果、従来「社会主義者」として理解されることの多かったネルゾンは、元々左派自由主義陣営に属し、人間理性の力に基づき道徳的な社会を構築するという、哲学的思弁に基づく左派自由主義の立場にあったこと、そして、第一次次世界大戦とロシア革命の勃発を機に、社会主義を標榜することになったことを確認した。その上で、第一次世界大戦を挟んだネルゾンのこの変化の意味を、同時期のドイツ社会主義の思想的拡大という観点から考察した結果、先行研究で示唆されていたSPDの「国民政党化」の一事例として理解できるのではないか、という展望を示した。 以上の成果は、学術論考として整理し、23年度刊行予定の査読付き雑誌への掲載が決まっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は、年度内の刊行は実現しなかったものの1編の論考を完成させ、査読付き専門誌への掲載を決めることができた。その中で、従来「社会主義者」とばかり考えられ、その伝統的な社会主義からの「逸脱」ばかりが強調されがちであった、ISKの創始者レオナルト・ネルゾンの思想が元来左派自由主義の立場にあり、その社会主義への転向こそ、同時代の社会主義思想・運動の拡大という時代状況を反映したものであったことを示唆することができた。これらは、本研究課題にとって重要な成果といえる。 その一方で、新型コロナウイルス感染症が収束しないなか、年度内の国外での史料調査が実施できてなかった。その結果、当初企図した1940年代のドイツ系亡命者の経験の分析が十分にできていない。このような状況に鑑みて、この評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
23年度は22年度に引き続き、これまでに蒐集したISK、Neu Beginnenによる定期刊行物、出版物の読解、分析を進める。これによって、彼らのナチス政権に対する視点とともに、社会主義者としての立場の変化、より具体的には革命路線からの離脱と親民主主義的態度の獲得過程を明らかとする。
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