研究課題
若手研究
「中世に国家はあったのか」が問われるほどに分権的な時代であった中世の国制の解明に向けて、本研究では、書状形式の文書の分析を通じて、鎌倉期における公家・武家・権門という諸権力の間で実践された様々な交渉(「政治的なコミュニケーション」 )に注目する。初年度は鎌倉期における書状形式の文書の悉皆調査を行い、2年目には蒐集した鎌倉期の文書の具体的検討に着手し、鎌倉期社会の人的つながりの具体像から当時の国家や社会の成り立ちを照射する。最終年度には学会報告やワークショップの開催を予定している。
個人から個人に送られる「書状」という形式の文書を素材にして、日本中世の政治文化や社会システムの再検討を行った。「書状」に注目することによって、人的ネットワークによって構築されていた日本中世の実態が明らかになると考えたためである。その成果としては、(1)鎌倉幕府北条氏の書状を網羅的に検討して、鎌倉前中期の執権政治や鎌倉後期の得宗政治に関する再検証と行ったこと、(2)御成敗式目をはじめとする幕府法が実際にどのように同時代の人びとに「理解」され、運用がなされていたのか、その実態を書状を含む中世の古文書の世界から明らかにしたこと、(3)古文書学の研究史の再検討と国際的な発信、などを行った。
従来の古文書学は、権力者の発給する命令文書を中心に組み立てられてきたが、それは支配・被支配の関係を軸として中世社会をみる考え方に通底するものだった。しかし、「書状」に注目することによって、単純な支配・被支配というタテの関係のみならず、ヨコの関係を含む多様な人的関係のありようを中世文書の世界から浮かび上がらせることができた。それによって、近代的な国家像や「法」のイメージで論じられがちであった鎌倉時代の社会の実態を明らかにするとともに、逆に今とも通底する社会の普遍性をも浮き彫りにできたことは、一見現代からかけ離れた中世の歴史を現在の私たちがリアルなものとして受けとめる材料になると思われる。
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