研究課題/領域番号 |
19K13383
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分03040:ヨーロッパ史およびアメリカ史関連
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研究機関 | 専修大学 (2020-2022) 東京学芸大学 (2019) |
研究代表者 |
松本 礼子 専修大学, 文学部, 准教授 (60732328)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 絶対王政 / ポリス / 社会的周縁 / パリ / 18世紀 / 18世紀 / フランス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究はパリをフィールドとし、絶対王政の伝統的統治が理念的にも実態的にも行き詰まりを見せていた18世紀後半において、多様化・流動化し、伝統的な統治構造から逸脱する諸種の社会集団に対して、都市統治一般を意味するとともに秩序維持を担っていた組織である「ポリス」側が、彼らをいかに社会内部に包摂あるいは排除したのか解明するものである。それにより、絶対王政末期の政治社会の理解に新たな視座を提供することを目的としている。
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研究実績の概要 |
本研究課題は18世紀パリを対象とし、フランス絶対王政期の統治構造の特徴である「社団的編成」の埒外に存在した周縁的社会集団に着目することで、都市統治一般を意味するとともに秩序維持を担っていた「ポリス」側が彼らをいかに社会内部に包摂あるいは排除したのか解明するものである。 令和4年度前半は、令和元年度までにフランス国立図書館で収集した史料の解読と分析を継続しつつ、令和3年度末に開催された「日仏歴史学会第10回大会」での本研究課題代表者による研究報告に対するフィードバックをもとに議論の精緻化を行った。その際、宗教的周縁であったユダヤ教徒の管理をめぐるポリス側の記録のなかには、この1年でフランス国立図書館によってデジタル化されたものもあり、コーパスを充実させることが可能となった。これら史料の分析と考察は、令和4年9月発行の『一橋経済学』第13巻に掲載された。 一方、令和4年度後半には、令和2年度・令和3年度と新型コロナウィルス感染症拡大のため断念せざるを得なかった渡仏が可能となり、現地での史料調査を再開することが出来た。それまでの史料分析および学会報告の結果、社団をもたない周縁的社会集団に対して用いられたポリス側の統治技法、つまり、彼らの人的ネットワークを把握し可視化させることで一つの集団と捉え、記録を徹底することにより自らの管理下に置くという実践が、周縁的社会集団の枠を超え、18世紀後半のパリ社会一般へと敷衍可能な段階として認識されていたのではないか、という新たな着想に至った。1776年の財務総監チュルゴーによる同業組合廃止(=社団解体の試み)と周縁的社会集団をめぐるポリスの統治技法の関連性を解明すべく、令和4年度の現地史料調査では、ポリス側と同業組合の折衝の記録を収集し整理することに努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題では上記の課題を解明するにあたり、以下の4つの段階を設定している。(1) 統治をめぐる理念・政策の解明 (2) 統治のための技術・実践の解明 (3) 身分社会におけるポリスの役割の解明 (4) 日仏近世比較史への還元。 このうち、(1)については令和3年度までに確定したコーパスの分析が済んでおり、(2)および(3)についても本研究課題代表者が既に入手済みの史料に加え、新たにフランス国立図書館によってデジタル化された史料を利用し、その分析結果は令和4年度までに「日仏歴史学会」での研究報告および『一橋経済学』にて論文の形で公開することができた。さらに、(3)については令和4年度の史料調査によって、新たな視座に基づいて議論を深化させる可能性が見出されたため、令和4年度後半から本研究課題最終年度である令和5年度にかけて議論を精緻化する予定である。(4)については、令和元年度末にフランスで開催予定だった日仏二国間セミナー「近世身分制社会を考える-フランスと日本の比較から」を、本研究課題の成果を還元する機会として想定していたが、令和2年度・令和3年度に引き続き、令和4年度も新型コロナウィルス感染症拡大の影響で開催は叶わなかった。一方、令和元年の史料調査の成果として執筆した論文が、コロナ禍を経て、日仏の執筆者による論集『「身分」を交差させる』に掲載され、令和5年5月に出版予定である。
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今後の研究の推進方策 |
継続してこれまでの現地史料調査で収集した個別事例に関する史料の精読と分析を進める。フランス国立図書館では、手稿史料のデジタル化が大いに進んでおり、随時、手稿史料のデジタル化状況を把握し、ネット上で閲覧可能な史料と現地での閲覧が必要な史料とをこまめに整理することで現地調査の効率化を図ることが可能となる。また、令和4年度に再開したフランス国立図書館・アルスナル分館での史料収集では、ポリス側とパリの同業組合の折衝の記録、同業組合間の地位をめぐる対立の記録等を入手することが出来た。一方で、パリの同業組合についての記録は、フランス国立図書館本館、フランス国立文書館、パリ市歴史図書館等にも点在しており、コーパスの整理と確定が必要であるが、さしあたり、アルスナル分館所蔵の史料分析を引き続き行う。 また、本研研究課題は令和4年度が最終年度であったが、長引くコロナ禍のため令和2年度・令和3年度の現地史料調査が叶わなかったため、研究期間延長をし、令和5年度が最終年度となる予定である。
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