研究課題/領域番号 |
19K13385
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分03040:ヨーロッパ史およびアメリカ史関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
石田 真衣 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 招へい研究員 (90839375)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | ヘレニズム / プトレマイオス朝 / エジプト / 書簡 / 組合 / 共同体 / パピルス / 碑文 / 嘆願 / 社会規範 / コミュニケーション |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、古代の多文化・多言語社会であるヘレニズム期エジプトにおける書簡を介したコミュニケーションの分析を通じ、これまで看過されてきた社会規範の形成と変化の過程を解明する。これによって、従来の法制度史的な見方から脱却し、日常的な交渉を通じて形成され変容していく社会規範がいかにしてこの時代の秩序維持に貢献していたのかを実証する。本研究は、未だ包括的分析がなされていない書簡研究を充実化させ、ヘレニズム時代におけるギリシア・エジプト文化間の相互関係性を明らかにすることにつながる。
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研究実績の概要 |
本年度は、これまで継続してきた嘆願書研究をまとめるとともに、ヘレニズム・ローマ期エジプトにおける私的組合(団体)の活動について調査をすすめた。具体的な研究成果は以下のとおりである。
(1)単著『民衆たちの嘆願:ヘレニズム期エジプトの社会秩序』(大阪大学出版会、2022年9月)を刊行した。本書では、第一に、ギリシア語史料とエジプト語史料の両面からエジプト社会における嘆願とその解決の実態を詳らかにし、第二に、この時代に加速する民族的・文化的混淆の最中を生きる民衆の視点から、ギリシア・マケドニア系を中心とする新興勢力とエジプト系神殿コミュニティを中心とする旧来勢力の関係構築のプロセスを解明することを目指した。民衆たちの行動をつうじて、古代の多文化社会の秩序がいかに維持され、変容したのか、従来のギリシア中心史観をエジプト側から見直し、新しいヘレニズム社会史を提示した。
(2)紀元前後のエジプトにおける団体研究に関する研究動向をまとめた。従来、エジプトの団体は、同時代のギリシア・ローマ史研究の枠組みにおいて語られてきたが、近年ではヘレニズム期以前からの団体結成の慣習にも目を向けるようになっており、この時代の共同体のあり方が捉え直されている。本研究では、団体研究の新たな視角として、紀元前後の地方自治の実態を示すいくつかの事例について検討し、課題を提示した。その成果については、「紀元前後のエジプトにおける社会結合」(『古代文化』75-1〈特輯 古代ギリシア史研究の現在地(1)共同体〉に収録)として刊行予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度と同様、COVID-19の影響により、私的組合の事例研究を実証するための資料調査を円滑に遂行することができなかったため、期間延長を申請した。一方で、書簡研究の一環として嘆願書研究の成果をまとめ、本として刊行することができたのは大きな進展である。
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今後の研究の推進方策 |
今後もCOVID-19や現地情勢の推移を見極めながら、可能なかぎり、資料の収集と分析をすすめる。 (1)ヘレニズム期からローマ期にかけての組合に関するパピルス・碑文史料を収集・調査し、データベースを作成する。 (2)エジプトの地方神殿と私的組合の関わりについて調査する。 (3)組合などのローカルな人的紐帯が、どのように維持されていたのかについて、書簡史料の調査から明らかにする。 以上の調査研究をとおして、ヘレニズム・ローマ期にかけての民衆たちの日常的コミュニケーションとその変容過程について総括する。
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