研究課題/領域番号 |
19K13392
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分03040:ヨーロッパ史およびアメリカ史関連
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
福山 佑子 早稲田大学, 国際学術院, 准教授 (40633425)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
|
キーワード | 古代ローマ / 記憶 / 皇帝 / ローマ皇帝 / 集合的記憶 / 文化的記憶 / 記録 / 歴史叙述 / 碑文 |
研究開始時の研究の概要 |
帝政前期のローマでは、ネロやコンモドゥスのように皇帝が暗殺等により後継者を残さずして死去した事例とそれにともなう内乱が度々生じていた。「危機」の後、皇帝や元老院はこのような事態を生じさせた人物が「悪帝」であったという記憶を作り出すことで、特に歴史書などの言論空間を通じて新たな歴史を構築している。そこで、この恣意的な集合的記憶の構築過程を、碑文史料に残された「危機」の時代の記録と、元老院議員などが記した歴史書における「危機」についての叙述の比較によって分析することで、国家が乗り越えた「危機」という集合的記憶の形成過程とローマ人の歴史認識の変容を明らかにする。
|
研究実績の概要 |
本研究の最終年度にあたる2023年度には、まず4-6月に在外研究でイタリアへ滞在し、現地の研究会への参加、研究についての意見交換、文献資料の収集などを実施した。滞在中には、受け入れ先であるフィレンツェ大学の研究者だけでなく、ローマ大学、ミラノのサクロ・クオーレ大学、ヴェネツィアのカ・フォスカリ大学の研究者と面会し、研究についての助言を得ることができた。7月以降は本研究の内容の一部について研究会での報告を行いつつ、論文の執筆を中心に研究を進めていった。また、研究で用いる史料に関連した国際学会での研究発表と成果の刊行も行っている。2023年度には十分な研究時間を確保できたため、本研究課題の成果を英語論文にまとめる作業を進めていった。 本研究は、帝政前期ローマで繰り返された政権交代という「危機」が、いかに歴史に織り込まれていったのかという問題の分析を通じて、古代ローマにおける過去の歴史認識と集合的記憶の改変過程を明らかにすることを目的としたものであった。研究期間の全体を通じた成果としては、まず『ダムナティオ・メモリアエ-作り変えられたローマ皇帝の記憶-』岩波書店、2020年の刊行があげられる。この本では、暗殺などによる皇帝の突然の死が主に2世紀と3世紀の歴史叙述においていかに描写されていたのかに着目し、このような「危機」についての描写が時期や社会背景に応じて変化していたことを述べた。この書籍は当初の研究成果の発表予定に比べて早い時期の刊行となったが、これを基礎として研究をすすめることで、古代ローマにおいてつくられた過去の記憶が2、3世紀のローマの歴史叙述だけでなく、より後の時代においてもいかに受容されたのかという問題についても取り組み始めることができたことから、当初の想定以上に研究の広がりを持つことができた。
|