研究課題/領域番号 |
19K13423
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分03060:文化財科学関連
|
研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所 |
研究代表者 |
宇高 健太郎 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存科学研究センター, 客員研究員 (30704671)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | 膠 / 墨 / 煤 / 文化財材料 / 日本画 / 東洋書画 / 修復材料 / 水墨画 / 文化財 / 保存科学 / 古典的膠 / ゼラチン / 東洋絵画 / 美術 / 文化財科学 |
研究開始時の研究の概要 |
申請者らが過年度研究において明らかにした伝統的材料区分である古典的膠について、各用途適性までを含めより広範に体系化する。該材料は、従来の膠製品には見られなかった、淡色かつ不光沢、高浸透性、といったその性状から、多くの文化財修復案件等において活用されている。本研究では、こうした材料の継続的かつ恒常的な利用を可能たらしめるべく、より安定的な製造方法の検討を進める。また膠の応用材料である墨等について、製造条件がその性状等に及ぼす影響を明らかにする。これらの材料の差異が書画表現等に及ぼす影響について検証し、関連知見の一般化とさらなる応用展開を目指す。
|
研究実績の概要 |
古典的膠の製造方法に関して、抽出温度及び時間や原料皮革加工方法等と製品性状との関連を詳細に検討し、より安定的に明色の製品を得られる条件の検証を進めた。膠製品の暗色化については、ケラチンを主とした微細な毛乃至表皮組織等の混入が大きく影響していると考えられ、本研究においては、製造工程で材料に薬剤を用いずこれを大幅に軽減する方法を明らかにした。当該成果は、特に文化財の保存修復や様々な美術工芸品の制作等に有用であると考えられる。また膠の代表的応用材料である墨に関して、報告者は近代以前の諸文献的記録等を参照し、日本及び中国の古典的諸方法による油煙煤及び松煙煤再現実験を過年度に行なってきた。これらの試料について、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置を用いて凝集体規模の測定を進めた。試料の凝集体規模は、燃焼方法や設備における採取位置等各製造条件を反映して多様であった。今後さらに広く試料精査を進め、製造条件と諸性状の関連を多角的に検証してゆく予定である。なおこうした煤の粒子等様態に関する知見は、墨の製造や書画制作、またそれらの復元等において企図した視覚的表現効果を得るうえで実際に有用である。さらに、現存する古墨や古書画等の構成材料判定や背景技術の推定、美術史的考証等においても広く応用可能であるものと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
前年度に続き、COVID-19流行に伴う社会状況や対人接触機会抑制等のため、調査や実験等の諸般に遅れが生じた。
|
今後の研究の推進方策 |
様々な条件における膠試料の調製を継続して進める。膠原料としては、当該研究課題において処理方法を確立した剃毛後表皮除去処理牛皮や、洗浄及び破砕処理を行った鹿角等を用いる。抽出に際しては、過年度研究に準じチタニウム製機材と温度調整装置等を用いて定量的加熱を行う。また各膠試料の物理化学的な特性について分析を行う。さらに各分析結果を、過年度の実験によって明らかにした試料群の分析結果と照合し、膠製造時の抽出等諸条件によって、成果物における物理化学的特性や成分等にどのような違いが生じるのかをより広範に検証する。 また膠の代表的応用材料である墨について、その分散性における膠の性状の影響と、膠-煤分子間の相互作用等に関して引き続き解明を進める。 過年度の実験において調製を進めてきた膠試料及び煤試料を用いて、墨の調製を行う。これにあたっては定速恒温混練装置を用い、一定の剪断力を加えて定量的に処理を行う。原料種及び配合比と、混練処理強度を段階的に変えて各試料墨を調製する。またレーザ回折・散乱式粒度分布測定装置やペーパークロマトグラフィー等によって、各墨試料の分散様態を評価する。
|