研究課題/領域番号 |
19K13456
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
高橋 絵里香 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 准教授 (90706912)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 高齢者ケア / フィンランド / 民営化 / 私事化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究はフィンランドにおいて進む高齢者ケア制度のプライヴァタイゼーション(私事化/民営化)についての実地調査である。これまで公的セクターが担ってきた高齢者ケアは、親族介護の拡大が公的に支援されるという意味で私事化が進む一方、民間企業の参入による民営化が推し進められる状況にある。福祉国家の規模縮小という共通の背景から同時並行的に立ち上がってきた2つの私的領域の拡大は、どのようにお互いと接続しているのだろうか。民間のケアサービスと親族介護が共に行政によって振興される状況についての記述から、私事化/民営化の動きを一つのプライヴァタイゼーションという現代社会における大きな流れとして理論化していく。
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研究実績の概要 |
フィンランドの高齢者ケア制度の私事化/民営化の進展状況について、2022年8月および2023年3月に実地調査によるデータ収集を行った。具体的には、行政の在宅介護チームにおける組織改革と効率化が現場にもたらした影響について調査を行った。また、高齢者ケアに関わるサービスを提供する私企業に対してインタビューを実施した。さらに、親族介護支援を受ける介護者/被介護者について、サービス利用状況の変化にともなうケア実践の調整についても記録した。 こうした調査から見えてきたのは、ケアサービスにおけるマネジリアリズムに基づく計画がサービス現場の臨機応変的な対応との間に生じる齟齬である。特に訪問介護業務のケアワーカーはスマートフォンのアプリによって業務管理されているが、それは訪問介護先での突発的な状況によって常に逸脱する可能性をはらんでおり、それが現場にストレスをもたらしている。 一方で、マネジリアリズムを実現するためのICT技術は、こうした齟齬を技術革新によって乗り越えようとしている。ケアサービスに関わるベンチャービジネスは、高齢者の抱えるリスクを予測する技術を推し進めることで訪問介護における業務計画からの逸脱を防ごうとしているが、その試みの成否は不透明である。 以上の調査結果を踏まえ、 共同研究を行っているフィンランドのCoE AgeCareグループのMid-Term Congress ‘Longer lives, better care?’において、最新の成果発表を行った。また、国立民族学博物館特別研究プロジェクト「不確実性の時代における家族の潜勢力―モビリティ、テクノロジー、身体」の国際シンポジウムにおいて、家族・親族の周辺領域における介護実践とそれを支える行政の取り組みから、家族の個人化概念を拡張する試みについて口頭発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまではコロナ禍のために都市部にあるケア企業を訪問できない状況が続いていたが、2022年度はヘルシンキに拠点を置くベンチャー企業を訪問することができ、研究が大きく進展した。一方で、サバティカル研修期間は過ぎているため、フィンランドに滞在する期間を長くとることはできず、企業へのインタビューも完了はしていない。そのため、今後の継続的調査が望まれる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度はケアサービスに関わるベンチャー企業に対するインタビューを進めるほか、親族介護者/被介護者に対するフォローアップも行っていく。さらに、フィンランドでは2022年1月からSOTE改革と呼ばれる社会福祉・医療制度の組織改革が実行された。こうした変化についても、現場が落ち着いた時点で新たな枠組みがもたらした変化について参与観察を行っていきたい。また、これまでに蓄積した調査データの分析を進めることで、成果報告をおこなっていく予定である。
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