研究課題/領域番号 |
19K13477
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
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研究機関 | 総合地球環境学研究所 |
研究代表者 |
金 セッピョル 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 客員助教 (00791310)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 文化人類学 / 葬儀 / 儒教 / 伝統 / 喪輿 / 葬列 / 文化財 / 大邱 / 映像人類学 / アート / 表象 / 韓国 / 近代化 / 葬儀の変化 / 自然葬 |
研究開始時の研究の概要 |
現代韓国社会における葬儀の変化は、土葬による墓地面積の肥大化問題から出発し、遺体処理という葬儀の物理的側面が先行している。それに比べ、家族・親族制度の捉え方という社会的側面や、死者をいかに表象するかという観念的側面は停滞しており、様々な葛藤やそれを修正しようとする動きが出現していると考えられる。本研究では、この背景にある社会文化的コンテクストや、そのなかで新しい形の葬儀はどのように形成されているかを、葬儀革新運動と伝統葬儀保存運動の共存様相を中心に明らかにする。ここで得られた結果と応募者のこれまでの日本を対象とした研究を合わせて、現代の葬儀の変化のメカニズムを考察することを目的とする。
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研究実績の概要 |
今年度は、喪輿保存活動(伝統葬儀保存運動)に関するフィールドワークのため、2回、韓国・大邱に渡航した。その成果として、第一、喪輿小屋という有形文化財を中心に行われていたこの運動が、大きな転換を迎えていることを確認できた。構成員たちは、この運動の意義が有形文化財の保存・継承に限らず、喪輿小屋に込められた葬儀文化であることを自覚していたが、従来の文化財行政においては受け入れられていなかった。今回の訪問では、文化財行政が変化し始めており、葬儀文化を軸に据えた施設を構想中であることがわかった。また、どのような経緯でこのような変化が可能であったか、行政側にインタビューすることができた。 第二の成果は、このような変化、及びこの運動の原動力について新しい知見を得たことである。この研究を始めた頃は、この運動の原動力が、近代化で失われたとされる「伝統的」葬儀への回帰希望であると考えており、それが韓国の葬儀の変化メカニズムにおいて最も重要だと考えていた。しかし現状はそれだけではなかった。会員たちのライフヒストリー調査の結果、喪輿小屋が過去の不特定多数の死が刻まれているマテリアルとして再解釈され、構成員たちに特殊な情動を呼び起こしていることがわかった。つまり、喪輿小屋が「伝統的」な葬儀と関連があるかどうかより、その情動が運動の大きな原動力になっている可能性がある。さらにこの情動が呼び起こされるきっかけとして、身近な人の死の経験があることがわかった。自分とは直接関係のない、不特定多数の死の痕跡が刻まれた喪輿小屋から、自分が身近に経験した死、さらには自分の死を想像するような過程があるということは、近年の死の個人化の傾向を鑑みると、特筆すべき現象である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フィールドワークは順調に進んでいる。また、成果発信のための準備も概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、喪輿小屋が呼び起こす情動に焦点をおいて、さらに調査を進めたい。また、書籍や論文執筆を進める。
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