研究課題/領域番号 |
19K13496
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分05020:公法学関連
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
堀澤 明生 北九州市立大学, 法学部, 准教授 (90647439)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | ダブル・トラック / パブリック・ニューサンス / デュアル・エンフォースメント / 補充性 / Rights of Action / Breach of Statutory Duty / Nuisance / 公法学 / エンフォースメント / 執行システム / 私訴権 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、「公私規範の多層的実現の実体法的検討」について検討する。 私人間の訴訟が,例えば迷惑施設などに関するものである場合には,背後に当該施設の許可を与えた行政が存在している。すると,被害を受けている住民は,行政に対して訴訟を提起するべきであり,迷惑施設運営者を訴えるのは本来のルートを潜脱しているのではないかという論争が提起されている。こうした「公益と私益の実現をどの主体に割り振り,いかなる手段を与えるか」という点について英米はかなり多様な選択肢を与えていると言われるが,その内部でも色彩が異なる。英国、米国連邦法、米国州法等を比較し,よりよき役割の配置を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、「公私規範の多層的実現の実体法的検討」について検討するものである。 negligenceを用いた行政法規範についての私訴の意義は限定的なものに留まると考えたため、今年度はパブリック・ニューサンスの研究に集中することとした。同訴権は、公衆の権利への侵害を観念し、これに対する原則的な救済は行政主体によるインジャンクションであるが、私人も、これと排他的ではない救済として、特別の損害を被っている場合には損害賠償を求めることができるもの(いわゆるspecial injury rule)であり、本研究テーマの恰好の材料となりえるものである。 この訴権は、戦後、行政主体による損害賠償が行われるようになっている。奏功しないものも多いが、著名な比較的成功したものにはたばこ訴訟やオピオイド訴訟がある。こうした訴訟について、コモン・ロー上の当該訴権の範囲を不当に拡大するものであるばかりでなく、制度論上も、議会からの委任のない形で行政主体と裁判所により政策問題を解決するものとして批判されている(Merrill等)。近年の、これらの批判にこたえる議論では、主に歴史的な当該訴権のカバーする範囲の広さと、政府の失敗を補完するものとして擁護している(Kendrick)。 本研究にとって興味深いのは、オピオイド訴訟における州裁判所の中には行政主体がパブリック・ニューサンスによって医療対応などの特別の損害を被っていると観念することで、special injury ruleを用いているものがあることである。これを制定法的にとらえると、日本行政法でも行政法的手法をより多様化できる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は3年計画の予定であったが、コロナ禍および外部的な任務によって、延長を重ねることとなってしまった。 他方で、パブリック・ニューサンスは、近年でも米国では重要な意味を有しているとともに、活発な論戦が行われていることが確認されたことについては非常に良い感触を得ている。この問題は、公私のエンフォースメントの交通整理に正面から答えうるものである。 本研究に関連する業績として、前年度の業績の延長ではあるが、『ミクロ憲法学の可能性』に消費者法や競争法におけるダブルトラックについて整理した論文をアップデートして掲載した。
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今後の研究の推進方策 |
パブリック・ニューサンスに関する、オピオイド訴訟(場合によってはコロナ禍をめぐる訴訟も)をめぐる文献や判例を読み進め、学内紀要や業界雑誌に掲載して本研究の業績としたい。
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