研究課題/領域番号 |
19K13522
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分05030:国際法学関連
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研究機関 | 東京経済大学 (2020-2023) 東京大学 (2019) |
研究代表者 |
若狭 彰室 東京経済大学, 現代法学部, 准教授 (00780123)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 条約 / 禁反言 / 国際法 / 条約法 / 法源 / 一方的行為 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,国際法上の禁反言法理の理論的研究である。すなわち,ある国際的主体による将来の行動に関する意思の表示である約束を法規範化する禁反言法理を対象として,かかる法理がいかなる場面でいかなる主体を対象として作動し,その結果生じた規範がいかなる制度の下で規律されるべきかを,禁反言の正当化原理からの演繹と,各種の判例・実行との整合性に基づき論じる。
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研究実績の概要 |
23年度は,22年度から引き続き,禁反言法理と条約の成立の機序の研究を,関連する個別の論点に着目して進めた。 第1に,昨年度の研究で示された,条約行為・条約規範・条約文書という観念区分と関連する個別の問題である。具体的には,いわゆるnegotiumとinstrumentumの区別と,「非拘束的文書(non-binding instrument/document)」という観念を本研究でいかに位置付けるかである。Negotiumとinstrumentumの用法は論者間で必ずしも一致しないが,近年,区別の意義を唱えた代表的論者の一人と評し得るd’Aspremontによれば,当事者が何を望むかにあたるnegotium=「内容」と,それを記録した「文書(document)」ないし「手段(instrument)」であるinstrumentum=「容器」は,「法的行為」に必要な2つの要素である。もっとも,d’Aspremontの理解には,条約行為・法的行為という法的次元における「容器」と,その存在を示す文書等の物理的次元における「容器」の混交がある。さらに「内容」が行為の内容と規範のいずれを指すのかも不明瞭となっている。行為・規範・文書をnegotiumとinstrumentumの区別に解消するべきではない。関連して,いわゆる「非拘束的文書」という用語についても,拘束的なのは文書ではなく規範であること,及び,拘束力ある規範と関わる文書の存在と当該規範がいかなる制度に基づき生じるかは別問題であることを指摘できる。「非拘束的文書」という用語は文章技術的な理由から用いられる便宜的呼称として理解できる。 第2に,条約成立の機序との関係で,国に対する強制により締結された条約の無効についても検討を開始した。ロシアによるウクライナ侵攻とも関わる論点であり,こちらの本格的成果は次年度に持ち越しとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
23年度は,ロシアによるウクライナ侵攻との関連で条約を巡って生じる実践的問題を念頭に置きつつ,22年度から引き続いて条約制度の基礎研究に従事した。個別の条約法の問題では研究の進展があるが,本研究の核心となる問いである,条約制度と禁反言法理との関係を巡る結論にはいまだ至っていないことから,「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
24年度は,本研究の最終年度として,一方で,条約制度を巡る歴史的展開の検討を通じて,いかなる理解のヴァージョンがあるかを明らかにし,他方で,条約成立の機序との関連では無効制度の理解を深めた上で,本研究の核心となる問いである,規範創設法理の多元化と統合可能性について,結論を得たい。
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