研究課題/領域番号 |
19K13539
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分05050:刑事法学関連
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研究機関 | 淑徳大学 |
研究代表者 |
渡辺 由希 淑徳大学, 総合福祉学部, 講師 (30738696)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 法心理学 / 被疑者面接法 / 知的障害者 |
研究開始時の研究の概要 |
昨今、足利事件のような知的障害者が冤罪となった事件が社会問題となっている。知的障害者が被疑者となったとき、彼らに対する取調べには十分配慮が必要である。従来の法心理学の分野では、取調べに配慮が必要な対象として、子どもに焦点を当てた司法面接の研究が行われてきた。それらは、被害者や目撃者となった人から適切に情報を得る方法だが、被疑者への取調べには罪状認否などが含まれるという点で、面接の構造自体が異なる。加えて、知的障害者がもつ独特のコミュニケーション様式を踏まえた面接構造となる必要がある。 よって本研究では、知的障害者への被疑者面接法を新たに開発し、適切な取調方法の提言に繋げたい。
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研究実績の概要 |
コロナ禍による衛生管理体制の厳格化は次第に緩和されてきてはいるものの、データ収集まで実施することはできなかった。そのため、昨年度実施した知的障害者が被疑者となった取調べの特徴をもとに、どのような取調べのコミュニケーションデザインが必要か、検討した。 昨年度の研究によると、知的障害者の取調べは(1)彼らが質問からずれた応答をした際でも、取調官(警察官など)がそれを訂正せず話し手の語りを促すような発話をしていたことや、(2)取調官による供述内容の要約などが行われていた。(1)については、事件に関する話題や構成要件の確認などの重要なトピックについて、本来被疑者が意図していた回答内容からずれてしまう懸念がある。また(2)については、そもそも供述調書自体が一人称の文体かつ要約された内容を記載した特殊な文書であるが、要約の過程でこぼれ落ちてしまうコミュニケーションの断片があるだろう。こうした事態にも対応できるような取調べのコミュニケーションデザインが必要である。 取調べ全体のデザインとしては、やはりイギリスで運用されているPEACEモデルが有効であると考える。山本・仲(2011)によれば、PEACEは情報収集アプローチであるため、自白を得ることよりも被疑者から報告を得ることに焦点を当てており、被疑者の言葉で可能な限り多くの事件内容についての報告を得るために、ラポールの形成、オープン質問の使用等の心理学的知見を生かした戦略が推奨されている。従来の日本型取調べは被疑者を真犯人と確証したうえでの取調べがなされるが、PEACEは自白獲得がゴールではないため、上述した(1)の事態が生じた際も、むしろその質問と応答のずれを解消するようなコミュニケーションが可能と考えられる。(2)の事態の解消については、今後の検討事項とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
データ収集がまだできていないこと、また研究実施者の体調不良等が重なったため。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度であるため、今年度中にまずは取調べのコミュニケーションデザインをもとに、データ収集を実施する。その後、分析及び研究成果を発表する。
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