研究課題/領域番号 |
19K13549
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分05050:刑事法学関連
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研究機関 | 國學院大學 (2023) 神戸学院大学 (2019-2022) |
研究代表者 |
山下 裕樹 國學院大學, 法学部, 准教授 (20817150)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 不作為犯 / 死体遺棄罪 / 犯罪の終了時期 / 状態犯 / 継続犯 / 公訴時効 / 公訴時効の起算点 / 危険犯 / 抽象的危険犯 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、不作為による死体遺棄罪の終了時期の問題を中心に検討し、その作業を通じて、作為犯と不作為犯の間に存在する公訴時効の成否に関する不均衡を解消し、訴追の公平性を担保することを目的とする。本研究の目的は、我が国の学説に多大な影響を与えたドイツにおける議論を参照しながら、不作為犯の犯罪の終了時期に関する一般論を展開し、また、死体遺棄罪の解釈論を再検討するという作業を通じて達成される。
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研究実績の概要 |
2023年度において、アウクスブルク大学(ドイツ)教授へのインタビューを実施し、同大学図書館にて、日本では入手不可の独語文献を入手した。ここでは、犯罪の終了時期という概念は規範論的には不要な概念であるが、手続法との関係において、公訴時効の起算点を決定する等の機能的な概念としてはなお意義を有するのではないか、逆に言えば、それに資することのできない理論は犯罪の終了時期の理論として不十分なのではないかとの示唆を得た。なお、出張を実施できたのは年度末(2月)であり、そこで手に入れた文献の精読・分析作業は現在進行中である。 本研究では、①ドイツおよび日本における犯罪の終了時期に関する学説を調査し、分析・整理した。通説は、犯罪の終了時期は最終結果の発生時点だと理解しているが、これによれば、本研究の中心にある死体遺棄罪のような危険犯では、危険が残存する限り結果が発生し続けていると考えられることから、犯罪の終了時期が到来しないことになる。しかし、この危険犯に関する犯罪の終了時期の理解は、公訴時効の起算点を決定するという機能を欠き、不適切なものである。 本研究では、②死体遺棄罪における「遺棄」概念を、学説・判例を整理・分析した上で、その保護法益を考慮しつつ検討した。一般人の宗教感情・敬虔感情という死体遺棄罪の保護法益からすると、葬祭義務者による適時適切な埋葬を阻害する行為が「遺棄」に該当する。この理解においては、葬祭義務者自身が埋葬しないという不作為による死体遺棄罪の場合にも、一定期間を過ぎれば「適時適切」な埋葬は実現不可能となるから、犯罪の終了時期が到来したと解すべきことになる。これは、一定期間の経過を重視する公訴時効制度の趣旨および機能的概念としての犯罪終了時期の理解にも合致する。 この本研究の成果は、公訴時効の実質的撤廃を実現する通説的理解を牽制・制限するものであり、意義がある。
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