研究課題/領域番号 |
19K13573
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | 愛知学院大学 (2020-2023) 名古屋経済大学 (2019) |
研究代表者 |
永岩 慧子 愛知学院大学, 法学部, 准教授 (90805582)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 請負契約 / 契約不適合 / 引取り / 修補に代わる損害賠償 / 修補費用請求権 / 自力修補 / 瑕疵責任 / 建築請負 / ドイツ法 / 瑕疵担保 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、債務不履行の一般規定と請負の契約不適合責任規定の適用関係を明確にし、請負の性質に即した解釈の方向性を検討するものである。2017年5月26日に成立した民法改正は、瑕疵担保責任に関する請負独自の規定を大幅に削除し、売買の包括準用とした。これにより、従来の裁判例で展開されてきた請負独自の解釈論がいかなる影響を受けるのかという問題が生じる。この問題について、わが国の民法が理論上常に影響を受けてきたドイツ法と比較し、そこで得た視点に基づいて検討を行う。このとき、わが国における理論が、実務からの要請を受けて発展してきたことから、ドイツと日本における実態の相違を前提にわが国の解釈論を構築する。
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研究実績の概要 |
本研究は、2020年4月1日に施行された民法(債権関係)改正による変更によって、請負の契約不適合責任に新たに生じた問題について検討するものである。そこには、実務と理論いずれの観点からも大きな関心が寄せられている論点として、契約不適合責任の適用時点をめぐる問題と、修補に代わる損害賠償請求権の要件をめぐる問題が挙げられる。 2023年度は、以上の問題について、まず、一点目に関し、2022年度に行った日本私法学会第85大会の個別報告と、その成果をまとめた論文に対する研究者からの指摘を踏まえ、残された課題について検討を進めた。また、二点目に関連するものとして、契約不適合に対する救済手段のうち、注文者による修補費用請求に関する問題を取り上げ、日本における議論の状況を整理したうえで、検討の一つの素材として、ドイツ法における「自力修補権(Selbstvornahme) 」に関する学説および判例の状況を参照した。ドイツ法における自力修補権は、損害賠償請求権とは区別され、請負人の過失に依存せず認められる救済手段として位置づけられている。日本においても、修補に代わる損害賠償をめぐる議論の中で、修補費用の請求を損害賠償請求としてではなく、債務者の修補義務から当然に導かれるものとして捉える見解が示されており、ドイツ法が明文上規定している自力修補権には、参考になる点が多い。そこで、ドイツ法の議論から、日本においても、修補費用の請求を取り出して扱うことの意義と必要性が見出しうることを指摘した。以上の成果は、論文「請負の契約不適合に基づく注文者の救済手段」にまとめ、田村耕一ほか『民事法改革の現代的課題―鳥谷部茂先生・伊藤浩先生古稀記念』に掲載の機会を得て公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、2022年度の学会報告において示した一定の方向性に対し、複数の研究者からの指摘や示唆を得ることができ、残された課題について検討を進めた。また、請負の契約不適合責任の効果として、注文者の救済手段における個別の問題に取り組み、論文の公表を行った。さらに、2023年9月には、ドイツに渡航し、バイロイト大学のシュミット=ケッセル教授から、ドイツ法の状況について教示いただく機会を得ることができた。 以上のほか、主に消費者保護の観点からではあるが、役務提供をめぐる法規制・被害救済の変遷と課題について検討する機会を得て、請負を含む役務提供契約に関するこれまでの議論を整理・分析することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度までに大きな影響を受けた新型コロナウイルス感染症の拡大を主な原因として研究期間を再々延長したが、研究計画全体に関する大きな変更はなく、当初の計画に従い、同様の視点において研究を進める。本研究の目的である請負の性質に即した解釈論の提示について、その後の学説・判例の状況や、国際的な議論の進展に注視したうえで、さらに検討を深める。その成果は、いち早く学術雑誌または書籍の形で公表できるよう作業を進める。
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