研究課題/領域番号 |
19K13604
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分06010:政治学関連
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
工藤 文 早稲田大学, 政治経済学術院, 日本学術振興会特別研究員 (80779067)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
|
キーワード | 中国 / 宣伝 / 人民日報 / 計量テキスト分析 / 半教師あり学習 / 正統性 / メディア / 新聞 / 権威主義体制 / テキスト分析 / 内容分析 / 権威主義 / 所有 / コミュニケーション / 政治宣伝 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は新聞の政治宣伝に対して計量テキスト分析を行い、新聞が党を社会問題解決の主体として描いていることを発見することで、現代中国における党の変容を明らかにすることである。先行研究は中国共産党による柔軟な支配のメカニズムを強調してきた。一方で、現実では習近平政権が強硬な支配に転換するなど、中国をいかに捉えるかが問題となっている。本研究では計量テキスト分析の手法を用いる。以上から、権威主義体制であっても政権を持続させるために人々の支持を得る必要があることを実証し比較政治学に貢献する。さらに、中国を研究するための新しい手法として計量テキスト分析の有効性を示し政治学に貢献することを目指す。
|
研究実績の概要 |
2022年度は2021年度に行った学会報告の成果に基づき、査読誌に論文を掲載することができた。「『人民日報』における報道内容の変容-1950年から2020年を対象とした計量テキスト分析-」と題して、『メディア研究』101号に掲載された(中山敬介氏との共著)。 1950年から2020年の70年にわたる新聞記事を対象に、『人民日報』における報道内容の変化を明らかにすることを目的に計量テキスト分析を行った。計量テキスト分析には、中国共産党に関する記事24896件を対象に、半教師あり学習(Semi-supervised learning)の手法を用いて分析を行った。はじめに、RパッケージのNewsmapによって国内の記事に分類した。その上で、Latent Semantic Scaling (LSS)を用いて種語を元に記事を分類した。 分析の結果、党に関する新聞記事において教条的宣伝を中心とする記事は依然として存在するものの、2000年以降に国家発展を中心とする記事の比率が相対的に高まったことを明らかにした。さらに、腐敗・汚職に関する報道では、自己批判から世論監督を中心とする記事の比率が2005年以降に高まった。ここから、『人民日報』を通じた正統性確保の手段が、思想・イデオロギーから党の成果を強調することに変容したことを明らかにした。 研究の意義は次の2点である。第1に、中国の権威主義体制とメディアの関係を、権威主義体制におけるメディア利用から捉える視座を提供した点である。党は経済成長や社会の問題を解決する成果を強調することで、人々の支持を集め正統性を確保しようとしていると推測できる。第2に、中国メディア研究の可能性を広げることができるという意義である。今後は、SNS、党大会や人民代表大会テキストなど、豊富な情報を含む政治テキストを対象に分析を発展させる予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年の学会報告の内容を修正、および分析手法を精緻化させた上で、査読誌に論文を掲載することができた。分析手法の精緻化について、具体的には代表的な記事に対して信頼性検定を行うなど、分析の妥当性を高めるための工夫を行った。導き出した結果も、当初の研究計画と合致した内容となっており、研究が順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
これまで新聞を対象に行っていた分析を、ソーシャル・メディア(中国版twitterと言われるWeibo)を対象にして、分析を発展させる予定である。中国共産党はソーシャル・メディアで宣伝を強化していると言われる。そこで、これまでの研究成果に基づき、ソーシャル・メディアにおける宣伝政策をまとめるとともに、ソーシャル・メディアテキストの分析を進める。
|