研究課題/領域番号 |
19K13607
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分06010:政治学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
細貝 亮 早稲田大学, 政治経済学術院, 客員准教授 (30582259)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2019年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 分極化 / メディアの選択性 / テキスト分析 / 選択的接触 / 補強効果 / 内容分析 / 極性化 / 機械学習 / 計量テキスト分析 / 政治コミュニケーション |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、全国紙の論調の極性化現象について、その実態と進行メカニズムを明らかにすることである。 近年、全国紙の論調の違いが以前よりも大きくなってきているとの指摘がしばしばなされるようになった。しかしながら、このような論調の極性化現象は、いつから、どの程度、どのような意味で進行していると言えるのか、検証が待たれているところである。本研究では、新聞記事の極性化の程度を示す「極性化指標」を提案し、これを各時代各争点の記事に適用することで、新聞論調の極性度の時代的変化を一貫した基準で記述するとともに、その進行メカニズムと発生条件の一端を解明することを目指す。
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研究実績の概要 |
新型コロナウイルス拡大によってデータ収集が当初予定より大幅に遅れた。そのためやや研究計画の方向性を修正し、当初予定のテキスト分析に加えて、世論調査を利用した有権者側のメディア接触と政治的態度の分極化の関係性の関する研究に着手した。当該研究については進展があった。世論調査の分析から有権者がインターネットから自身の政治的態度に合致する情報を比較的多く受け取っていることが判明し、インターネットの普及が政治の分極化をもたらすメカニズムについて一定の証拠が得られた。ただし同時に、現代においても政治情報の主要な情報源はテレビや新聞でありインターネットのプレゼンスは相対的には小さいこと、政治態度の分極化が大きいのはむしろ高齢の有権者であることも明らかになった。これらの研究成果を2回、国内学会で発表する機会を得た。 また今年度途中からデータ収集状況も改善しため、事前の計画にしたがって、テキスト分析によるメディアの分極化の検証も再開した。データの収集が進んだ「原発再稼働」と「共謀罪/テロ等準備法案」の記事の分極化度を、機械学習のひとつであるランダムフォレストによって推定したところ、当初の予測通り朝日新聞と産経新聞の間の分極度が最も大きくなり、読売新聞と日経新聞はその中間にあることが確認できた。ただし利用する機械学習の種類やハイパーパラメータのチューニングによって、得られる数値の変動がかなり大きいことも判明し、再現性のある分析結果のためにはさらなる改良が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染拡大による施設の利用制限等からデータの収集が大幅に遅れていたが、今年度から徐々に改善したことで、当初予定に沿って研究を再開することができた。データ量は予定よりも少ないが、現在手元にあるデータを使った予備分析では、概ね期待通りの結果を得られた。ただし、テキスト分析を実施する際の機械学習手法については改善の余地があることも判明した。 仮に新型コロナウイルスの感染が再拡大した場合、データ収集が困難になる可能性があるが、その場合は、現在手元にあるデータのみで最終報告をせざるを得ないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の方向性には大きく2点ある。まずは世論調査を利用したメディアの分極化に関する研究を進める。この研究自体は、当初予定にはなかったアプローチであるが、今年度上述の通りある程度まとまった成果を発表できた。またその結果としてさらなる研究の端緒を得たため、継続して研究に取り組む予定である。具体的には、世論調査で得られるメディア接触と保革イデオロギー態度の関係性から、メディアの分極化度を間接的に測定し、その時系列変化を検証したいと考えている。 第二に、新聞記事の分極化度をテキストの特性から測定する研究については、記事の収集と整理を可能な限り進めたい。同時に、テキスト分析で利用する機械学習手法についてもさらなる改良を進め、再現性の高いテキスト解析の条件についても方向性を示せるようにしたい。 いずれの研究も、ある程度知見がまとまとまったところで、学会あるいは研究会で発表、フィードバックを得た後、学術雑誌への投稿を考えている。
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