研究課題/領域番号 |
19K13630
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分06020:国際関係論関連
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研究機関 | 福山市立大学 |
研究代表者 |
松浦 正伸 福山市立大学, 都市経営学部, 准教授 (90736042)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 歴史認識問題 / 記憶 / 和解プロセス / 和解 / 権力政治 / 韓国 / 北朝鮮 / 国際政治 / 日韓関係 / 日朝関係 / 歴史和解 / 歴史認識 / 日韓共同宣言 / パワー / 太陽政策 / 日朝平壌宣言 / 東アジア |
研究開始時の研究の概要 |
国際政治学の思考枠組から歴史和解について分析するのが本研究の基本的な視座である。脱冷戦期、日本と「2つのコリア」との間では「日韓共同宣言」と「日朝平壌宣言」という歴史和解に向けた共通の動きが顕在化した。本研究では、これらの外交的変化を歴史和解をめぐる重要な転換点と位置づけ、歴史和解と現実政治との相互作用性について、マルチ・アーカイブル・メソッドとデータ・マイニング手法に基づきながら解明する。
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研究実績の概要 |
本研究のテーマは、「脱冷戦期日韓・日朝関係における歴史和解プロセスの国際政治学的分析」である。東アジアの歴史和解をめぐる研究は、これまで実証主義的歴史学に分析レベルが集中し、その重要性にもかかわらず、国際政治学的なアプローチによる分析が等閑視されてきた。そこで、韓国・北朝鮮との間で外交問題化している日本の植民地清算に関する歴史認識問題を国際政治学の視点から分析し、異なる歴史認識を有する国家間関係において、いかにして「和解」が導かれるのかを明らかにすることを本研究の目的として設定した。本年度においては、脱冷戦期日本と2つのコリアにおける歴史和解プロセスの推進要因を抽出し、歴史和解の理論形成を目指すための概念的・基礎的な検討として、国際学会において、学術成果の一部を発表した(末尾に参考情報を記載)。担当した分析パートでは、歴史認識をめぐる国家間関係を考察するために、内外の先行研究を踏まえながら、日韓関係との比較事例として、欧州における二か国間、多国間関係を分析した。左記の分析結果は、あらゆる事例を包括するほどの普遍性は見られず、限定的なものではなあるが、友好関係を樹立するための「記憶」と、紛争を激化させるための「記憶」における選択は、経済政策や外交安全保障分野などのいわゆる「ハードパワー」」から強い制約を受けていることを示す結果となっている。この点については、今後、さらなる検証を行う必要がある。
The 2nd congress of EASA, East Asian Sociological Association “Possibility of Historical Reconciliation and Autonomy of Civil Society between Japan and South Korea”2021年10月30日。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の3年目にあたる2021年度には、過年度から続いている日韓関係における歴史認識の表象をめぐる先行研究の整理とデータ・資料の収集を行う予定であった。また、これとともに、調査対象となる国内外の「記憶」をめぐる歴史館等での現地調査を実施する予定であった。すなわち、歴史和解と現実政治にはどのような相互作用が見いだされるのか、どの段階で国家は歴史和解に向けた謝罪が十分であると判断するのか、歴史和解に必要な条件とは何なのかを解明するべく、調査対象展示物の専門家や一般住民らへの調査を念頭においた。しかしながら、COVID-19の影響で、韓国調査が実施できなくなった。このような事情のため、基礎的な一次史料の収集だけでなく、日韓の政策決定者や専門家を対象としたインタビュー調査への協力を依頼することができなかった。他方で、歴認識問題の和解プロセスの理論化に向けた作業の前提作業を行うことが出来た。すなわち、ロシアやバルト三国をはじめとする他地域・他事例の歴史認識問題の和解葛藤要因について、内外の先行研究をもとに、政治学的な観点から分析することが出来た。それでも全体的には、現在までの進捗状況としては「やや遅れている」ものと判断される。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は当初の研究計画のとおりに進んでいないことから、2022年度は2021年度に考察しきれなかった概念的検討を進めていきたいと考えている。他方で、現時点ではコロナ禍が予断を許さない状況にある。このため、次年度においても、慎重に計画を進めていきたいと考えている。具体的には、韓国出張などの海外における現地調査に関しては、現時点ではまったく見通せていない。金大中大統領の手記や韓国外交文書等、韓国語文献を中心に研究が体系化されているため苦しい状況にあるが、韓国語文献以外の資料を参考にしながら、研究を推進していく予定である。特に、これまで考察してきた研究事例を軸にしながら、国家による暴力と和解をめぐる記憶をいかに社会科学的な手法によって概念化していくのかについて考察を深めたい。さらに日韓関係に関する様々な資料やデータから得られた研究成果を精緻化させながら、リモートによる調査代案策を模索し研究計画が順調に進むように諸策を講じる。脱冷戦期に日本と「2つのコリア」との間で模索された「歴史和解のプロセス」について明示的に説明されていないが、これまでの調査によって、根本的な原因は、東アジアでの歴史和解に向けた日韓・日朝関係の試みが、独仏間の事例とは異なり「すべて失敗してきた」という前提の下で議論が進められている点に起因することが分かってきた。最終年度においては、上述したような策を講じることで、斯様な含意を体系化せしめたい。
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