研究課題/領域番号 |
19K13668
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分07030:経済統計関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小池 祐太 東京大学, 大学院数理科学研究科, 准教授 (80745290)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 高次元中心極限定理 / Cramer型の相対誤差評価 / Steinの方法 / 高頻度データ / 高次元共分散推定 / graphical Lasso / 高次元データ / 多重検定 / ネットワーク解析 / Malliavin解析 / スマートベータ / 共分散行列推定 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、非常に多数の銘柄を含むような大規模金融データから、その共分散行列および精度行列を推定するための統計理論の開発を目指す。大規模金融データの共分散行列や精度行列は、どの銘柄にどの程度投資をするかという資産運用戦略を構築する上で重要な役割を果たす統計量である。本研究では、特に金融市場の短期間の変動に対応するために、1日内の取引のデータのような高頻度データに着目する。
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研究実績の概要 |
対数凹な確率分布に従う独立同分布な確率ベクトルの和に対する高次元中心極限定理の収束レートを改善する研究を行った。共分散行列の最小固有値が下から正の定数で抑えられているような非退化な場合には、筆者が以前行った研究により、サンプル数に関する対数項を除いて次元についてもサンプル数についても最適な収束レートが達成可能であることが示されていたが(Annals of Applied Probability, 2021, vol. 31, pp 1660-1686)、本年度の研究ではその結果を共分散行列に対する制約がない場合に拡張することを試みた。結果として、スペクトルギャップに関するKannan-Lovasz-Simonovitsの予想(KLS予想)が正しければ、実際に拡張可能であることを示すことに成功した。さらに、次元がサンプル数よりも大きいような高次元のレジームでは、以前の結果では余分に得られていたサンプル数の対数項を除去できることも示すことができた。仮にKLS予想が正しくなかったとしても、現在知られているKLS予想に対する最良の評価を用いれば、得られた結果は共分散行列が退化する場合には既存の評価をサンプル数に関する収束レートについて大幅に改善している。副産物として、高次元データにおける最大値型統計量に対する正規型近似の相対誤差評価に関する評価も得られた。証明には、本年度はじめに発表されたKLS予想の進展に関する論文(arXiv:2203.15551)において示された、確率局所化に関する高精度な評価が重要な役割を果たした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
前年度の計画では、二重Skorohod積分に対する混合正規近似の相対誤差評価を導出することで、高次元実現共分散行列に対するBenjamini-Hochberg法の正当化を行うことを計画していた。しかし、本年度のはじめにKLS予想に関する大きな進展がarXiv:2203.15551において発表され、この論文の結果・証明の技法と、前年度の研究の副産物として得られていた「射影版Wasserstein距離に対する評価を導出することで高次元中心極限定理を証明する方法」を組み合わせることで、以前証明した対数凹な分布に従う独立同分布確率ベクトルの和に対する高次元中心極限定理の結果を拡張できることがわかったため、本年度はこのテーマの研究に注力したため。
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今後の研究の推進方策 |
上記の理由で結果的に中断してしまった前年度計画の研究テーマに取り組むことを計画している。すなわち、Malliavin-Steinの方法によって二重Skorohod積分の混合正規近似について高次Wasserstein距離に関する評価を導出し、その結果を前年度に開発した方法によって相対誤差に対するCramer型の評価に転換する。そのような結果が得られれば、高次元実現共分散行列に対するBenjamini-Hochberg法の正当化が得られることが期待される。
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