研究課題/領域番号 |
19K13672
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分07030:経済統計関連
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研究機関 | 東京経済大学 |
研究代表者 |
木下 亮 東京経済大学, 経営学部, 准教授 (10732323)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 計量ファイナンス / 計量経済学 / 資産価格理論 |
研究開始時の研究の概要 |
リスクのある資産を保有する際の報酬であるリスクプレミアムの大きさが明らかになれば、投資家及び企業の意思決定に役立つ。本研究は、資産価格モデルに関する推定方法の改良を行うことで、リスクプレミアムのより良い推定値を得ることを目標とするものである。統計理論とシミュレーションによって提案した推定方法の性質を明らかにし、主に国内データを用いた実証分析に応用する。
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研究実績の概要 |
本研究は株式収益率の共通変動要因のリスクプレミアムの推定におけるバイアスの除去に取り組んでいる。昨年度までの研究では、バイアスの小標本における性質について検証を行っていたが、実証分析において説得力のある結果を得ることはできていなかった。今年度の研究では、主にマクロ経済指標をファクターとして採用する場合において、ファイナンスや統計学の理論と整合的な結果を得ることができた。具体的な成果は以下の通りである。マクロ経済指標は、株式市場全体に影響を与える要因であり、逆に言えば株式収益率に将来のマクロ経済指標に対する期待が反映されていることになる。そのため、マクロ経済指標と連動するようなポートフォリオを作成することができれば、その期待収益率としてリスクプレミアムを推定でき、同時にマクロ経済指標の予測変数を作成できることになる。この際に、ファクターへの感応度に対して真の値ではなく推定値を用いることによる観測誤差のバイアスが生じることが知られている。これはインサンプルでの推定で作られた予測値がアウトオブサンプルでは望ましい性質を満たさないことを意味する。本研究では、実証ファイナンスにおける古典的な方法である感応度によるグループ分けを用いることでバイアスを除去できることを再確認し、それを日本の株式市場に応用した場合にインサンプルとアウトオブサンプルで整合的な結果、すなわち再現性のある結果を得ることができた。しかし、2020年度以降には構造変化の疑いがあり、モデルに再現性が無い結果となった。また、多数のファクターを用いる場合には推定は困難である。本研究の結果は研究会等での報告を行った段階であり、次年度以降に論文としてまとめることになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の研究ではリスクプレミアムの推定におけるバイアス修正を応用した実証分析を行った。得られた結果は理論と整合的なものであり、先行研究よりもアウトオブサンプルでの再現性が高い結果となっている。また、バイアス修正が上手く機能しない場合のメカニズムに関しても整理できつつある。これらの結果は研究会で報告しており、論文にまとめて投稿段階に入っている。しかしながら、当初の予定では今年度までに理論及び実証分析をまとめることになっていた。研究期間を延長し、次年度に論文をまとめることになる。また、昨年度までの成果も体裁等の微調整に時間を要している。近年の計量ファイナンスにおけるモデルや推定方法の発展の調査に予想以上に時間を要することにもなった。次年度もしくは研究期間終了後に本研究の成果が論文等を通じて公開されることが予想される。これらを総合してやや遅れていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、これまでに得られた成果を論文にまとめる。具体的には、マクロ経済指標のリスクプレミアムや借入制約付きのCAPMの実証分析において、観測誤差によるバイアスの除去の重要性を論文にまとめる。これらに関しては頑健性の検証は必要であるが、既に実証結果を得ることができている。更に、これらに対応する方法やシミュレーションの結果を論文にまとめる。これらの結果は伝統的に用いられてきたモデルや実証研究に関しては十分な貢献をもたらすと考えられる。しかし、近年の高度なモデルに対しては慎重な議論が必要になる。次年度以降の研究では、高度なモデルに対応できるような推定方法の拡張はできないまでも、それらとの関係性を整理できるように近年の研究を調査する必要がある。すなわち、最先端の動向を伺いながら、適宜修正して論文を執筆することが今後の研究の推進方策となる。
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