研究課題/領域番号 |
19K13679
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分07040:経済政策関連
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研究機関 | 長崎県立大学 (2020-2023) 政策研究大学院大学 (2019) |
研究代表者 |
森岡 拓郎 長崎県立大学, 地域創造学部, 講師 (80725507)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 企業始業時刻 / 時間的集積の経済 / 空間的集積の経済 / 混雑 / 鉄道 / 大都市交通センサス / 始業時刻 / 企業の利潤最大化 / 鉄道混雑 / 離散選択モデル / 企業間取引 / 企業立地 / 出発時刻 / コロナ / 時間的な集積の経済 / 企業の意思決定 / 鉄道の混雑 / 負の外部性 / 企業の始業時刻選択 / 通勤混雑 / 生産性 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は時間的な集積の経済を推定するために、企業の始業時刻設定の意思決定をモデル化し、推定する。モデルは企業の始業時刻を他の企業と合わせることで生産性が上昇する時間的な集積の経済と、ピーク時に始業時刻を設定することで労働者が混雑等の不効用を被ることの、トレードオフの関係を記述する。推定結果を用いて、時間的な集積の経済に影響を与えるような施策の評価を行う。
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研究実績の概要 |
首都圏の企業始業時刻始業時刻の決定要因を、大都市交通センサスの約20万人分の個票を用いて分析した。分析した結果分かったのは、企業の始業時刻決定要因が、企業の業種、立地によって変わることである。 企業が始業時刻を決める際には(1)他社との時間的空間的集積の経済、(2)通勤者の生活時間への影響、(3)通勤者の鉄道混雑から被る不効用を考慮する。しかしこの3つの要因をすべての企業が一様に重視するわけではない。分析から分かったのは、建設業、製造業、運輸業、教育、医療、公務員は早めの始業時刻を選んでいること、学術研究産業、生活関連・娯楽産業、宿泊業・飲食業は遅めの始業時刻を選んでいることである。これらの結果は企業が始業時刻を選ぶ際に顧客とのフェイス・トゥ・フェイスコミュニケーションを円滑に行うことを重視していることを物語っている。 また都心の企業ほど始業時刻が遅く、郊外ほど早い傾向があった。この理由としてすぐに思い浮かぶのは都心の企業が従業員に過度の早起きしなくて済むように、早い始業時刻を避けたというものである。しかしこれは正しくない。なぜなら分析の結果、通勤時間が長い従業員が多い企業が始業時刻を遅くしているわけではなかったからである。都心の企業であっても立地によっては、郊外の企業とあまり従業員の平均通勤時間が変わらない企業もあったが、それでも始業時刻は郊外の企業よりも遅かった。よって都心の企業が始業時刻を遅くするのは生活時間への配慮ではなく、郊外の企業よりも重視している、混雑および時間的空間的集積の経済が原因と推察できる。これらの研究結果を研究としてまとめ、2023年応用地域学会において発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナによって2020年予定されていた大都市交通センサスの調査が時期が後ろ倒しになった上にICカードによる調査のみとなり始業時刻の調査がなくなるなどの事態が影響した。
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今後の研究の推進方策 |
ここまでの研究で企業の業種、立地による始業時刻の決定の違いを分析してきた。ただしまだ分析できていないのが、混雑が始業時刻に与える影響である。このために2015年の大都市交通センサスを用いて、混雑率を計算し、そして企業の始業時刻選択に混雑が影響しているかを分析したい。 ただし難点は、同一地域にあるすべての企業が同じように混雑を回避しようと考えて始業時刻を決めてしまうと、新しくその時間の混雑が激しくなってしまうということである。つまり混雑を回避しようとすれば必然的に他社とは異なる行動を取るはずで、混雑回避行動はデータでは分かりづらくなってしまうのである。 このため混雑率と始業時刻の関係については、地域ごとの企業の始業時刻の平均ではなく、分散に注目することで、産業や立地ごとの傾向を明らかにする予定である。
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