研究実績の概要 |
本研究により、中国による廃プラスチック輸入禁止措置が日本、中国及び全世界に与えた影響を定量的・定性的に明らかにした。本研究の最終年度には、中国の当措置による日本の生産量の減少を通じて中国及び全世界に与えた影響を試算した。その結果、中国の当措置が日本の生産額を年平均4.2兆円程度減少させ、それに伴う日本からの輸入の減少によって中国の生産額は年平均1,100億円減少し、日中を含む全世界では年平均5兆円程度減少させることを明らかにした。また、GDPに対する影響として日本は年平均0.4%の減少であったため、中国の当措置は日本に対して比較的軽微な影響であったことも示した。さらに、中国の産業ごとに与える影響も試算した結果、コンピュータ・電子部品・光学製品製造業の生産額には負の影響が大きいことも示し、中国の当措置が中国の産業に対して跳ね返ってくる負の影響に関しても定量的に明らかにすることができた。以上の推計には応用一般均衡モデルの特殊モデルである産業連関モデルを使用することとなったが、World Input-Output Datebase(WIOD)から得た国際産業連関表を用いたことで、各国間の投入産出構造を考慮した推計をすることができた。最終年度の研究成果は論文[1]にまとめている。また、研究期間全体としては、プラスチックごみ問題と中国の当措置を概観した論文[2]も作成した。この論文を通して、中国の当措置により日本国内で起きていることの定性的な面に着目することができたと言える。 [1]加藤真也・小嶋寿史(2024)「中国の廃プラスチック輸入禁止措置の産業連関分析」山口経済学雑誌, 72(6), pp.19-39. [2]加藤真也(2020)「プラスチックごみ問題と中国の廃プラスチック輸入禁止措置」East Asian Forum, 37, pp.8-10.
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