研究課題/領域番号 |
19K13724
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分07050:公共経済および労働経済関連
|
研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
鈴木 将覚 専修大学, 経済学部, 教授 (10621229)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
|
キーワード | 法人税の分析 / 国際課税 / デジタル課税 / 法人税の実証分析 / 多国籍企業の所得移転 / 税制 / 法人税 |
研究開始時の研究の概要 |
法人税の課税ベースをいかに設定するかは、伝統的かつ本質的な問題であるが、以前から学術研究において見解の相違がある。この背景には、法人税の望ましい課税ベースが企業のグローバル化などの経済環境によって変化することがある。このため、望ましい課税ベースを考えるにあたっては、企業が現在直面している経済環境を十分に考慮に入れて、課税ベースの変更が国内投資や対外直接投資、外国子会社への所得移転などにどのように影響するかといった問題を丹念に検討していくことが必要になる。そこで、本研究では、法人税の課税ベースの変更が企業の投資及び所得移転に及ぼす影響を理論的・実証的に分析する。
|
研究実績の概要 |
これまで、本研究では次の2つのタイプの論文を発表してきた。1つは、グローバル化・デジタル化の下での法人税に関する論文である。多国籍企業による所得移転や経済のデジタル化を利用した課税逃れに対して、法人税をどのように改革していくべきかを考察した。現在、国際課税分野ではOECDのBEPSプロジェクトの第1行動計画の「2つの柱」に基づいて、各国が税制の協調に向けた努力を行っているところであるが、本研究はそれに関連するものである。また、経済のグローバル化・デジタル化によって生じる問題に対して、消費税や所得税を含めた包括的な視点で日本の税制改革のあり方を論じた。 2つ目のタイプの論文は、設備投資に関する実証分析である。設備投資に対する固定資産税の影響とともに、設備投資に対する法人税の影響を調べた。法人税は、企業所得に対する実効税率を高める効果がある一方で、企業が直面する不確実性の影響を和らげる効果 がある。同論文では、固定資産税が企業利潤の多寡に関わらず課される一方で、法人税は利潤が発生しない限りは課税されないという違いから、両税の設備投資に対する影響が異なることを実証的に明らかにした。 令和4年度は、こうした2つのタイプの研究のうち、グローバル化・デジタル化の下での法人税に関する研究を深めることに注力した。その成果は、日本財政学会「成長と分配の好循環と財政」などで報告された。また、OECDのデジタル課税案である「第1の柱」、「第2の柱」の内容についても吟味し、今後の日本の法人税のあり方を検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、大きく分けて「所得移転に関する理論分析」と「法人税の効果に関する実証分析」の2本立てから成っている。「所得移転に関する理論分析」については、令和2年度に抜本的な法人税改革に関する問題の検討ができたことで、一定の目標を達成した。「法人税の効果に関する実証分析」についても、固定資産税とともに法人税の設備投資に対する実証分析を行うことができたことから、目標とされる結果が得られたと考えている。 デジタル課税については、いま世界的に関心が高い事柄であり、実際の政策的対応についても現在進行形で議論が進んでいることから、今後も考え方を進めてより新たな分析につなげていく予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
近年、OECDの「2つの柱」アプローチに基づいて、国際課税分野の議論及び各国の政策的な対応が盛んに行われている。日本もどのような政策決定を行うべきかを考えなければならない状況にある。一方で、その基礎となる研究が世界的に必ずしも十分に行われているわけではないため、本研究ではアカデミックな観点からどのような結論が導けるかを引き続き考えていく予定である。
|