研究課題/領域番号 |
19K13752
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分07070:経済史関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
王 慧子 東北大学, 経済学研究科, 博士研究員 (00748965)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2019年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 日本陸運企業 / 陸運業の近代化 / 明治期の長距離陸運業 / 明治期の商取引と物流 / 中牛馬会社 / 陸運会社 / 内国通運会社 / 長距離継立運送 / 内陸運輸業 / 近代日本物流 / 日本長距離運輸企業 / 内国通運株式会社 / 近代日本物流企業 / 明治初期地方商品流通 / 近代商取引 / 近代日本長距離運輸企業 / 近代日本陸上長距離輸送 / 陸運企業 / 継立長距離運送 / 長距離内陸運輸業 / 混合交通 |
研究開始時の研究の概要 |
「中牛馬会社」と「内国通運会社」などの近代陸運企業体の経営活動についての研究によって、従来に未解明であった近代日本とくに鉄道が内陸運輸の中心となる前後の内陸運輸企業の経営内容と経営方法の実態変化を明らかにする。それで、該時期の複数の交通運輸業を結合しつつ企業的な発展を実現する「混合交通」としての特性は近代日本長距離内陸運輸企業の産業史的性格であることを明らかにしたい。 そして、第一次世界大戦期までの日本通運会社などの物流企業の経営に関する資料調査を進め、これらの陸運企業の経営史(会計)、産業史(イノベーション)的な側面から日本全国の物流産業の形成発展史に関する実証研究を行なう。
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研究実績の概要 |
今年度は前年度の作業に引き続いている。研究内容の時期に関して、明治5~12(1872~1879)年までの期間を日本近代的長距離陸運業発展の第一段階として設定し、陸運企業が牛馬背と河川舟運などの運送手段によって日本の長距離輸送の最盛期である。明治13~23(1880~1890)までの期間を近代日本長距離陸運業発展第二段階として設定し、鉄道建設熱とともに、従来の長距離継立運送業から長距離運送手段は鉄道を中心とした運送業へと陸運業界の再編成が行われる時期である。これらの期間中の全国陸運企業のデータをできる限り調べて、主要な研究対象「中牛馬会社」と「内国通運会社」の一次文書史料を確認しながら、史料の整理、解読、分析作業を進めながら、全体の年表とデータ・ベースを作りつづけている。 また、『明治初期における地方長距離陸運企業の組織と経営―中牛馬会社を事例として―』を題目とする論文を作成して経営史学会に投稿して審査先生からのコメントをいただき書き直して修正中である。審査先生からの貴重なコメントと指摘に従って、投稿論文の課題設定、学説史、論文趣旨、資料図表の引用などを全体的に書き直して再投稿したいところである。 そして、陸運業の第二発展期は内陸運輸企業が大きく転換する時期である。各地方の鉄道駅前に鉄道貨物を取扱う業者が現れ、中牛馬会社、内国通運会社は依然として長距離輸送業者として経営を進んだ実態に関する文書史料と帳簿などの解読と分析作業が進んでいる。とくにこの時期運送した荷物が数量から質への変化の相関関係を数字から明らかにした。この期間における日本全国の長距離陸運業の全体像と代表的な陸運企業の発展、具体のサービス内容と実際の経営状況を実際の文書史料を解読と分析によって具体化と詳細化が進んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
まず本年度はようやく史料調査へ出かけるようになった。まず長野県上田市博物館と藤本蚕業歴史観へ調査に行った。小さい子供がいるので長い調査はできなくて、一泊二日間でまず史料の目録から確認した。コロナ以来、資料の閲覧に関する規定が大きく変わりました、数量制限、事前予約などが必要となっている。史料調査のために事前確認、準備作業が必要となる。上田市立博物館で明治期における長距離陸運企業に関する研究中の「上田中牛馬会社」と「陸運会社」の史料がある「滝沢家文書」の目録を調べた。牛で荷物を運ぶ史料、上田商人の商取引に関する史料の一部を確認した。これから閲覧する申請と許可を得た。また藤本蚕糸歴史館へ行って江戸後期から明治期間の蚕糸業取引・流通・物流に関する史料調査した。蚕種の取引に関する帳簿などがたくさんあるが、物流に関係する史料が少なかった。当時陸運会社の重要な荷物の一つ「養蚕荷物」に関係ある史料はまた調査が必要である。 次に、本年度は引き続きオンラインで公表している明治期から大正期の産業部門の諸統計データ(「府県統計書」、「勧業年報」、「帝国統計年鑑」、「農商務統計表」など)を整理と入力しながら、陸運企業のデータと合せて分析作業を進んでいる。 さらに、文書史料の入力作業は進んでいが、荷物運送関係の「帳簿」、「送り状」などの史料がたくさんあるので、入力できたのは半分ぐらい、遅れている。こちらのデータは実証分析の重要なデータになるので、できるだけ詳細的に入力した上で、分析作業を進みたいのである。また、一般の商取引荷物と特別の生糸荷物の輸送関係史料を大きく分けて作業が進んでいる。 そして、個人的な事情であるが、2歳児の育児は研究時間と活動に大きく影響して、当初の予定より大幅に遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
まず、できるだけ史料調査出張へ行く予定である。研究対象とする内陸長距離輸送網沿線長野県、群馬県、新潟県、埼玉県、山梨県、石川県、富山県などの地方の文書史料館、郷土資料館、図書館、博物館などへ調査出張に行って、資料収集を実施する予定である。関係ある資料を調査して確認し、申請と許可を得る上で、撮影し、整理して近代内陸運輸業のデジタルアーカイブを構築する作業を進みたい。 次は、引き続きこれまで収集してきた一次文書史料のデータ整理、入力、解読分析作業を進む予定である。具体的には現在整理・分析中の経営史料群(長野県小諸市小山五衛門家文書、長野県長野市中沢與左衛門家文書、長野県岩村田家依田家文書)を用いた研究と新たに取り組む内国通運株式会社などの競合陸運諸企業に関する研究を組み合わせることによって、全国的な陸運企業へとつながっていく第一次大戦期まで陸運業全体の構造と特質、また主要地方の陸運企業と工業生産、市場経済、商品流通の関連を明らかにしたいという方向である。 研究成果の発表も以下の焦点にあたって学会報告と論文執筆を進みたい。近代日本陸運業の第二の時期は1880年代~1880年代末頃、鉄道建設熱とともに、従来の長距離継立運送業から長距離運送手段は鉄道を中心とした運送業へと陸運業界の再編成が行われる時期である。各地方の鉄道駅前に鉄道貨物を取扱う業者が現れ、中牛馬会社は依然として長距離輸送業者として経営を進んだ実態を検討する。鉄道の敷設路線に沿って運ぶ道筋を考えながら、商品の運送筋を新たに作り上げた。また、従来の商人荷物の運送は会社の経営に限界が現れ、1890年代以降製糸業の勃興とともに、中牛馬会社が輸送技術の革新を行い、近代的な会社組織に再編成し、運送した荷物が数量から質への変化の相関関係を明らかにしたい。
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