研究課題/領域番号 |
19K13888
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
大林 真也 青山学院大学, 社会情報学部, 准教授 (10791767)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2019年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 間接互恵性 / ゲーム理論 / 協力行動 / ビッグデータ / 因果推論 / 反実仮想シミュレーション / 社会的ジレンマ / 協力 / 実験 / テキストマイニング / シミュレーション / 公共財 / 社会関係 / 数理モデル |
研究開始時の研究の概要 |
現代社会では、人々の移動やコミュニケーションが容易になり、多様な人々が頻繁に交流するようになった。それに伴い、人間関係も多様で流動的なものとなっている。この高い多様性と流動性は、社会を豊かにするという良い一面も持っているが、相互協力を達成するうえでは難しさも孕んでいる。本研究の目的は、こうした高い多様性と流動性を持った社会関係において、いかなる条件の下で人々が協力し合うことができるのか、ということを経験的かつ理論的に解明することにある。
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研究実績の概要 |
本研究は、流動的な社会関係において人々が協力するためのメカニズムを理論的かつ実証的に解明することである。具体的な対象として、コミュニティ・ユニオンにおける組合員同士の助け合いや、格安スマホサービスmineoのフリータンクと呼ばれる会員同士のパケット共有システムにおける協力行動の分析を扱っている。前者については、分析自体は終了したが、推定結果を元にした反実仮想シミュレーションのコードを書き実行中である。しかし、計算量が多く、2台のパソコンで計算しても1年間で全体の半分程度の計算しか完了しなかった。一方後者は、前年度に会員がフリータンクをどのように認識しているのかを表すフレームを自然言語処理の方法で探索的に分析したものがあったが、その分析をもとに別の分析を行った。具体的には、会員が自然災害に被災した際に利用できる災害支援タンクによる支援が、その後のフリータンクへの貢献にどのような影響を与えるのかを、因果推論のフレームワークに基づいて差分の差推定を行った。その結果、災害支援タンクの利用がその後の公共財への貢献を有意に上昇させることが明らかになった。また、同様の分析枠組みに基づいて、災害支援タンクの利用がその後の、「互恵的フレーム」の使用を有意に上昇させることも明らかにした。人から助けられたことによって、その後の援助行動が増えるという、協力行動の連鎖は、上方型間接互恵性(upstream indirect reciprocity)と呼ばれるが、理論研究でその重要性は指摘されている一方、十分な経験的証拠が存在しなかった。しかし本分析により、社会において上方型間接互恵性が存在することを証明することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コミュニティ・ユニオンの協力行動の実験(反実仮想シミュレーション)は研究者自身が作業をすべき部分は完了した。しかしながら、シミュレーションの計算量が多く、パソコン2台を使っても全然進まなかった。これに関しては、稼働できるパソコンを増やす見込みはないので、待つしかないのが現状である。 また、mineoの間接互恵性についての因果分析は完了することができた。しかし執筆に時間がかかり論文投稿まではいけなかった。しかし、論文の執筆は完了させ、英文校正も済ませることができたため、来年度早々に投稿をすることができる状態にはなっている。 また、協力行動の実験(あらかじめ与える規範やフレームによって、協力行動がどのように変化するのか)については、実験のシステムを作るところまではできたが、被験者の募集などが、コロナの影響もあり、順調に進めることができず、予定していた本年度の実施を見送らざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
反実仮想シミュレーションに関しては、このまま2台のパソコンで計算を続けるしかない。 また、mineoのデータ分析に関しては、執筆した論文を速やかに投稿し、査読プロセスをスタートさせること予定である。 また、協力行動の実験については、実験のアイデア・その実装は本年度中に行うことができた。しかし被験者の募集に時間がかかることがわかったため、次年度はそのことを見越して8月9月の夏季休業期間中に実施することを目標に実験計画を立てる予定である。
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