研究課題/領域番号 |
19K13892
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 京都女子大学 |
研究代表者 |
森久 聡 京都女子大学, 現代社会学部, 准教授 (20736649)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2019年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | まちづくり / 観光開発 / 質的データの二次分析 / 伝統産業 / 歴史保存 / 観光資源化 / 比較社会学 / 歴史的環境 / 社会層 / 歴史遺産の比較社会学 / 港湾都市 / まちづくり・地域再生 |
研究開始時の研究の概要 |
なぜ歴史遺産を観光資源化として活用する政治過程において社会的緊張が生じるのか。歴史遺産の観光資源化は地域社会に何をもたらすのか。これが本研究の問いである。 戦後の日本社会は古いものを新しいものへと置き換える開発政策を維持してきたが,現在,地域社会の伝統文化や建築物・町並みなどを保存する動きが活発になっている。しかし歴史遺産を残す過程において歴史評価や負の記憶などをめぐりコンフリクトが生じることが多い。そこで本研究では,歴史遺産の保存と観光資源化について3つの事例研究を重ねたうえで都市間で比較分析を行う。この分析によって,コンフリクトの実態を明らかにし,「地域活性化」の社会学的な定義を示したい。
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研究実績の概要 |
2023年度は,本研究プロジェクトの申請時の研究計画に基づき,新型コロナの影響でフィールドワークが十分に実施できていない鞆の浦の調査を中心に取り組み,小樽市の調査は再スタートのきっかけを構築することに取り組んだ。 鞆の浦調査としては,鞆の浦でまちづくり市民活動を続けるNPOへのヒアリング,また観光化に直接関連している当事者にもヒアリングを行った地元観光施設の運営者,地元の特産品の製造販売会社の経営者,福山市観光課および文化振興課へのヒアリング調査を実施した。また,資料収集として,郷土資料館,市立図書館において鞆の浦のまちづくりに関連する資料の収集を行った。そのほかに鞆の浦の伝統的な祭礼行事を見学し,町内の歴史資料館など観光施設などを視察した。 地元まちづくりNPOおよび観光施設運営者からは,行政の観光政策の進め方について厳しい評価をしていることがわかった。また,伝統的な特産品を製造販売している会社では,新商品の開発にあたって特産品の製造免許や法規制により,様々な制度的なジレンマを抱えていることが分かった。そして観光課は,これまでの行政と市民の関係性が現在の取り組みに少なからず影響していることや文化振興課では補助金が打ち切られてからも継続して観光開発に取り組みたいという高い意欲を確認した。 小樽調査については,コロナ禍以前から継続していた「雪あかりの路」参与観察調査を再開した。まちづくり活動に取り組む市民団体による観光イベントに参与観察調査を実施することで,まちづくり活動に込められた理念を読み解くことが目的であるが,今年度の調査によって,手作りのイベントから商業化された形態への変化の端緒がみられた。観光イベントを通じてまちづくりを提唱した世代が引退しはじめており,今後,小樽のまちづくりが市民活動としての理念と考え方に変化があるのか注目する必要があることを示唆することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナの影響で現地調査が難しかったことに加えて,新型コロナによって市民活動のあり方も大きく変化しており,この期間の空白を埋める作業に追われているから。また,大牟田市の調査については,共同で研究を進めていたが,新型コロナの影響で共同研究者との意思疎通が難しかったことと,お互いに私的な事情で研究活動に十分な時間を確保できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
現地の地域社会および市民活動の変化の動きが,新型コロナによるものなのか,地域社会そのものの変化によるものなのか,慎重に見極めるために,これまでに新型コロナの影響を丁寧に評価していく。そのなかでこれまでの研究計画に沿ってフィールドワークの取り組み方を新型コロナ以前の状況まで回復させることで研究を進めていきたい。また,これまでの研究成果をまとめて刊行していきたい。
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