研究課題
若手研究
本研究は、現代社会学および社会心理学の《帰属》概念に影響を及ぼした、20世紀前半のドイツ語圏で主に論じられた自然科学の《帰属=対応づけ》概念の含意とその社会科学への応用を検討し、20世紀の社会科学と自然科学の科学方法論に共通する視点として《帰属》という考え方の意義を明らかにすることを目的とする。そのために、フリッツ・ハイダーによる知覚心理学と対人関係の心理学における帰属概念の展開を足がかりとして、ハイダーが参照した同時代の自然科学の《帰属=対応づけ》概念と、その社会科学への応用、さらに社会科学の《帰属=帰責》概念との異同について検討する。
本研究では、オーストリア初期社会学史における人文・社会科学および自然科学との間での学際的な展開と、オーストリア初期社会学における社会心理学の貢献の大きさ、また移住・亡命社会科学者たちによるその研究手法と知見の伝播について、確認することができた。とりわけオーストリア、特にグラーツでは、当初より必ずしも現在のディシプリンとしての社会学に収まらない社会学的研究が行われており、ハイダーが自然科学や哲学的認識論のみならず、社会学的知見をどのように摂取していたのかという点も、あらためて追求すべき課題となった。さらに社会心理学を媒介とする、初期現象学的社会学と現象学的心理学という両者の関わりが示唆された。
帰属概念の発展を手がかりとして、とりわけオーストリア初期社会学を中心とする、社会学と社会心理学の方法論的発展を跡づけるなかで、自然科学と人文・社会科学とのあいだでの参照関係、学際的な展開が明らかになった。しかしその一方で、例えば自然科学から社会科学へのより単純な移植が、その後の社会科学の各分野の発展を受けて継承されることなく、他ならぬハイダーの帰属概念に見られるように、あくまで各専門分野の対象領域に応じた展開が必要であり、そうした導入にあたっては、むしろ導入先の専門分野や隣接分野で先行する知見を参照して行わなければならないという点は、なお今日に通じている。
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