研究課題/領域番号 |
19K13932
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 京都大学 (2023) 国立社会保障・人口問題研究所 (2019-2022) |
研究代表者 |
藤間 公太 京都大学, 教育学研究科, 准教授 (60755916)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 社会学 / 里親支援 / 社会的養護の〈脱施設化〉 / 日伊比較研究 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、イタリアと日本における社会的養護関係機関や里親へのヒアリング調査と(質的分析)、既存の公的統計や社会調査データの二次分析(量的分析)を行った上で、結果を社会理論と接合して解釈することで、①脱施設化を達成した国では、どのような里親支援が行われているのか、②そうした国での取り組みを日本に応用することは可能か、③可能でないならば、脱施設化を妨げる日本独自の社会的背景は何か、という3つの問いの解明に取り組む。
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研究実績の概要 |
新型コロナウイルス感染拡大により、国内外での対面での調査の実施が困難な状況が続いている。それゆえ、文献サーベイと前身の研究プロジェクトで行った調査で得たデータの二次分析、さらに政策文書等の分析を実施することにより、中間的な成果を継続して公表している。 2023年度においては、社会的養護をめぐる諸施策が前提とする想定、特に「社会的養護の環境を「家庭」に近づけるべき」との主張について、改めて批判的な検討を行った。このような主張の問題は(1)保護者、特に母親にケアの負担が集中する「家庭」のような環境において、ケアラーが直面する困難が看過されてしまうこと、(2)保護者の下で育つ子どもと社会的養護を受ける子どもとの間で、受けられるケアや教育のオプションをめぐる格差が拡大するおそれがあること、(3)「少人数の大人で少人数の子どもをケアする」というあり方が強調されるあまり、本来は多様より多様でありうるケアのあり方を検討する視野が制限されること、(4)「社会的養護の家庭化」という主張が、しばしば誤った現状認識のもとになされていること、(5)「家庭」をモデルとすることで、社会的養護を受ける子どもや、その子どもたちを支援する社会的養護の担い手たちを不当に貶めてしまう危険があること、という問題がある。さらに、これらの主張は十分な根拠を伴っているわけでもない。ここでいう根拠とはたとえば、家庭養護出身者と施設養護出身者とのそれぞれを対象に、現在の暮らし向きや身体の健康、メンタルヘルスの状態などに関する調査を行い、結果を比較することなどを指すが、そうした試みは体系的には行われていない。 以上の検討の結果を踏まえ、日本の社会的養護政策が依拠する演繹型の思考がさまざまな問題を帰結していることを指摘した。今後は帰納型思考にもとづく政策策定へと転換していく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナ禍の影響は緩和されつつあるものの、関係機関との折衝には引き続き課題があり、前年度に引き続き海外調査は実施できなかった。一方、代替的に行った理論研究に関しては成果が刊行されるなど、遅れを取り戻しての進展が認められる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は最終年度に当たるため、延長期間も含めた5年間の総括を行う。主として理論的な検討を主とし、日本の社会的養護の現状と課題、それらを帰結している演繹型思考が生成された背景について考察を行う。また、現地調査が実施できなかったことについては、方法論の面も含めて検討し、後続プロジェクトに向けた示唆を得ることを目指す。
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