研究課題/領域番号 |
19K14068
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
農中 至 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (50631892)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 人間観 / 地域観 / 地域思想 / 筑豊文庫 / 棄民 / 流民 / 屍 / 廃鉱 / 戦後社会教育史 / 地方社会教育史 / 北部九州産炭地 / 教育・文化運動 / 上野英信 / 炭鉱 / 社会教育 / 鞍手町 / 地域文庫 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は旧産炭地・筑豊地域に暮らした記録文学者・上野英信の「筑豊文庫」の取り組みと地域における教育・文化運動の関係性を明らかにするものである。検討対象とする時期は1960年代から1980年代にかけてである。本研究の特色は、一人の鍵となる人物の定住した地域の近隣関係に着目し、その人物による活動の地域社会における意味と価値とはいったいなんだったのかを考察する点にある。上野自身、地域での地道な教育・文化活動についてたびたび言及しているが、それらの活動の地域住民にとっての意味やその他の地域における教育・文化運動とのかかわりの有無を問われたことはこれまでほとんどないことから、ここに本研究の意義がある。
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研究実績の概要 |
本年度は主に、既刊資料・書籍(雑誌記事、座談会記録等を含む)にもとづく文献調査・分析をおこない、これまでの調査・研究を通じて検討してきた内容と成果の統合をめざした。特に、筑豊文庫を運営した上野英信がどのような思想・信念をもち、筑豊地域と対峙し、炭鉱労働者および地域住民のことを考えようとしていたのかという視点から、分析・検証をおこなった。このことは、なぜ上野が筑豊文庫の活動を閉廃山後の筑豊地域で展開したのかに迫る意味を持つ。 上野英信は、炭鉱労働者の実態に迫り、記録することを生涯の仕事としたが、それらがどのような思想・信念によるものであったのかを探るために、上野の地域思想を読み解こうと試みてきた。具体的な作業としては、筑豊地域の社会課題を上野がどのように受け止めたのか、勤労大衆との連帯・関係の在り方をどのように模索したのか考察した。その上で、筑豊文庫をつくることによってなにを実現しようとしたのかについても吟味した。これらの作業を通じて、のちに自治体史において特殊社会教育施設と記録されることとなった筑豊文庫開設・運営における、上野英信の思考の一端を跡付けた。 今後の計画としては、現地でのフィールド調査をほとんどできていないことから、それらを実施していくことと、筑豊文庫の同時代的な地域受容の実態解明に向けて現地調査を進めていくことである。再延長の最終年度でもあることから、中長期的な現地滞在も視野に、筑豊文庫の地域受容の実態にアプローチしていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
流行感性症が一旦は落ち着いたものの、断続的かつ中長期的な現地調査を要する本研究では、ただちに現地でのフィールド調査を開始・再開することが難しかった。特に、聞き取り対象として高齢者を想定した本研究では、現地に出向き調査を進めることは極めて困難であった。そのため、当初計画にもとづく現地調査はいまだ不十分な状態にある。 さらに、当該地域の中広域的な特質や筑豊文庫が立地した地域の持つ特性の記述・分析には、現地における踏査が不可欠であるものの、いまだ十分な情報が集められていない。 一方で、すでに収集した図書・書籍や新たに発見した資料に基づく、筑豊文庫を利用・受容した側(地域住民)ではなく、運営・経営した側(上野英信)の思想・信念の分析・検討は可能であったことから、本年度は本作業を優先したため、フィールド調査および調査研究に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
再延長最終年度となる本年は、この間遅れつつも進めてきた研究のさらなる前進に努めていきたい。特に、筑豊文庫が立地した社会空間の記述および社会教育関連施設、自治公民館などのコミュニティ施設との位置関係も調査・整理しながら、当該社会において筑豊文庫が立地していた地域的意義についての考察を進めていきたい。 また、過去に筑豊文庫を利用した住民や筑豊文庫を継続的に訪問していた人物への接触を試み、筑豊文庫の地域受容の一端に迫っていきたい。 時間的な制約も含め、多くの制約があるが、文字資料では浮かび上がることのない、筑豊文庫の地域受容の実態と受容の構造、住民の日常生活と筑豊文庫との関係など、これまで十分に解明されていない内実に迫るための調査・研究を進めていくこととしたい。
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